ポストカラム吸光光度法による六価クロムの分析 (SI-50 4E)

クロムは自然界には通常三価クロムの状態で安定して存在しています。一方、六価クロムは非常に強い酸化作用があり、触れると皮膚炎や腫瘍を起こすほか、吸入すると鼻粘膜の障害を起こすことや発がん性が指摘されるなど、強い毒性を持つことが知られています。そのため、六価クロムは環境基本法・環境基準や水質汚濁防止法・排水基準など多くの法令で規制の対象にされています。2018年3月に環境省で作成された「有害大気汚染物質測定法マニュアル」には、大気粉じん中の六価クロムの測定方法が示されており、アルカリ含侵フィルターによる捕集-イオンクロマトグラフ-ポストカラム吸光光度法による測定条件が収載されています。この測定条件では、カラムで分離された後に 1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド(1,5-Diphenylcarbonohydrazide)による誘導体化を行い、紫外可視吸光度検出器で検出します。この測定法での目標定量下限値は、「EPA(アメリカ合衆国環境保護庁)の10-5リスクレベル基準が 0.8 ng/m3 であることから、その10分の1である 0.08 ng/m3を測定できることとし、可能であれば、更に低レベルの基準であるWHO欧州事務局ガイドラインの 0.25 ng/m3 の10分の1である 0.025 ng/m3 まで測定できることが望ましい。」とされています。今回、陰イオン分析用カラム IC SI-50 4Eを用いた条件で、六価クロムの標準試薬を測定しました。
図1に、0.1、0.5、1、2、5 µg/L の六価クロムの標準試料およびブランクのクロマトグラムを示します。なお、測定サンプルとなるアルカリ含浸フィルターの抽出液は塩基性(pH9 - 10)であるため、標準試料の溶解溶媒は 5 mM炭酸ナトリウム+ 5 mM 炭酸水素ナトリウム溶液となるように調製しました。図2に六価クロム 0.1 ~ 5 µg/L の検量線を示します。この範囲の直線性は相関係数rが0.9999となり、良好な結果が得られました。

Sample : 500 µL, K2Cr2O7 Std.


図3に 0.1 µg/L の標準試料のクロマトグラム(n=6)を示します。表1に 0.1 µg/L の標準試料の再現性(n=6)を示します。算出した結果、保持時間のCV%は0.14 %、定量値のCV%は1.58 %でした。また、0.1 µg/L のクロマトグラムから算出した定量下限値(S/N=10)は 0.032 µg/L、検出下限値(S/N=3)は 0.009 µg/L でした。この定量下限値を大気粉じん濃度に換算すると 0.022 ng/m3 となり、 WHO欧州事務局ガイドライン目標定量下限値0.025 ng/m3 を満たしていました。(算出根拠:5 mL容量、5 L/min・24 hr 捕集;有害大気汚染物質測定方法マニュアル参照)



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Columns        : Shodex IC SI-90G (4.6 mm I.D. x 10 mm) 
                 + SI-50 4E (4.0 mm I.D. x 250 mm)
Eluent         : 40 mM Na2CO3 + 5 mM NaHCO3
Reagent        : 2 mM 1,5-diphenylcarbonohydrazide-10 % methanol - 0.25 M sulfuric acid
Flow rate      : (Eluent) 0.6 mL/min
                 (Reagent) 0.2 mL/min
Reaction temp. : 40 ℃
Detector       : VIS (540 nm)
Column temp.   : 40 ℃

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