溶離液に用いる緩衝液は使用するpHにおいて緩衝能が大きく緩衝作用を持つイオンがイオン交換体と同じ電荷を持っているものを選びます。その一例を下記の表に示します。NaCl、KCl、Na2SO4、K2SO4等の塩溶媒の使用、あるいは緩衝液との併用が可能です。全濃度は20 ~ 600 mMの範囲が一般的です。
pH range | Buffer |
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3.8 - 4.3 | Sodium formate |
4.3 | Sodium succinate |
4.8 - 5.2 | Sodium acetate |
5.0 - 6.0 | Sodium malonate |
5.5 - 6.7 | MES |
6.7 - 7.6 | Sodium phosphate |
7.6 - 8.2 | HEPES |
8.2 - 8.7 | BICINE |
pH range | Buffer |
---|---|
4.8 - 5.0 | N-Methylpiperazine HCl |
5.0 - 6.0 | Piperazine HCl |
5.8 - 6.4 | Bis Tris HCl |
6.4 - 7.3 | Bis Tris Propane HCl |
7.3 - 7.7 | Triethanolamine HCl |
7.5 - 8.0 | Tris HCl |
8.0 - 8.5 | N-Methyldiethanolamine HCl |
8.4 - 8.8 | Diethanolamine HCl |
8.5 - 9.0 | 1,3-Diaminopropane HCl |
9.0 - 9.5 | Ethanolamine HCl |
- MES: 2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid
HEPES: 4-(2-hydroxymethyl)-1-piperazine ethanesulfonic acid
BICINE: N,N-bis(2-hydroxyethyl)glycine
Tris: tris(hydroxymethyl)aminomethane
Bis Tris : Bis(2-hydroxyethyl)iminotris(hydroxymethyl)methane
Bis Tris propane: 1,3-Bis[tris(hydroxymethyl)methylamino]propane
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使用するカラムは試料の電気的性質つまり試料の等電点(pl)により決まります。
- 1.pl > 7.0 (塩基性物質)の場合 --- Asahipak ES-502C 7C (陽イオン交換クロマトグラフィー用カラム)を用います。
- 2.pl < 7.0 (酸性物質)の場合 --- Asahipak ES-502N 7C (陰イオン交換クロマトグラフィー用カラム)を用います。
(ただし、中・低分子物質の場合でもグラジエント溶出が適している場合もあります。)
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イオン交換クロマトグラフィー用カラムを用いる分析では2つの溶出方法があります。
- 1.グラジエント溶出----荷電量の多い、タンパク質、核酸等の高分子物質の分離。
- 2.イソクラティック溶出----荷電量の少ない、ペプチド、カテコールアミン、アミノ酸等の中・低分子物質の分離。
(ただし、中・低分子物質の場合でもグラジエント溶出が適している場合もあります。)
グラジエント溶出で試料が塩基性物質の場合(ES-502C 7Cを使用)
- (1)試料を20 mM ギ酸ナトリウム (pH4.0)に溶解して注入します。溶出容量が4 mL以下で溶出する成分はカラムとの相互作用がほとんどないのでES-502N 7Cを用いて検討してください。
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(2)20 mM ギ酸ナトリウム (pH4.0)から20 mM ギ酸ナトリウム (pH4.0) + 500 mM NaCl へのリニアグラジエント(40 min)を行ってください。結果に応じて下記を検討してください。
- 分離が不十分な場合 ---- pHを下げる、グラジエント勾配を緩やかにする。または、負荷量を下げる。
- ピーク間隔が広すぎる、または時間がかかりすぎる場合 ---- pHを上げる。または、グラジエント勾配を急にする。
- 吸着する場合 ---- pHを上げる、または、有機溶媒を数 % ~ 50 %の範囲で加える。
グラジエント溶出で試料が酸性物質の場合(ES-502N 7Cを使用)
- (1)試料を20 mM エタノールアミン-HCl (pH9.0)に溶解して注入します。溶出容量が4 mL以下で溶出する成分はカラムとの相互作用がほとんどないのでES-502C 7Cを用いて検討してください。
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(2)20 mM エタノールアミン-HCl (pH9.0)から20 mM エタノールアミン-HCl (pH9.0) + 500 mM NaClへのリニアグラジエント(40 min)を行ってください。結果に応じて下記を検討してください。
- 分離が不十分な場合----pHを6 ~ 8にする、グラジエント勾配を緩やかにする。または、負荷量を下げる。
- ピーク間隔が広すぎる、または時間がかかりすぎる場合----pHを下げる。または、グラジエント勾配を急にする。
- 吸着する場合----pHを上げる、または、有機溶媒を数 % ~ 50 %の範囲で加える。
イソクラティック溶出で試料が塩基性物質の場合(ES-502C 7Cを使用)
- (1)試料を20 mM リン酸ナトリウム (pH6.0~7.0)に溶解して注入します。溶出容量が4 mL以下で溶出する成分はカラムとの相互作用がほとんどないのでES-502N 7Cを用いて検討してください。
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(2)20 mM リン酸ナトリウム (pH6.0~7.0) + 500 mM NaCl溶離液で分離を行ってください。結果に応じて下記を検討してください。
- 分離が不十分な場合 ---- NaCl濃度を下げる。それでも改善しない場合は、pHを3 ~ 9の範囲で変更する。
- 吸着する場合 ---- pHを変更する(pH3以上)、または、有機溶媒を数 % ~ 50 %の範囲で加える。
イソクラティック溶出で試料が酸性物質の場合(ES-502N 7Cを使用)
- (1)試料を20 mM Tris-HCl (pH7.0~8.0)に溶解して注入します。溶出容量が4 mL以下で溶出する成分はカラムとの相互作用がほとんどないのでES-502C 7Cを用いて検討してください。
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(2)20 mM Tris-HCl (pH7.0~8.0) + 500 mM NaCl 溶離液で分離を行ってください。結果に応じて下記を検討してください。
- 分離が不十分な場合---- NaCl濃度を下げる。それでも改善しない場合は、pHを変更する(pH10以下)。
- 吸着する場合---- pHを変更する(pH10以下)、または、有機溶媒を数 % ~ 50 %の範囲で加える。