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第3部:逆相・順相、HILIC、イオン交換等のカラム

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目次

10.逆相カラム
 10-1.ODSカラム
 10-2.その他のシリカカラム
 10-3.ポリマーカラム
11.順相カラム
12.HILICカラム
13.逆相・順相カラムのまとめ
14.イオン交換カラム
15.配位子交換カラム
16.イオン排除カラム




10.逆相カラム
10-1.ODSカラム
 分離モードに逆相モードを用いるカラムのことを逆相カラムといいます。逆相モードに用いるゲルは、シリカゲルを基材としてこれに官能基と呼ばれるものを結合したものを使います。飲み屋横町の場合でば、飲み屋が並んでいるだけでも良いのですが、客引きが出ていれば更に効果的に客を呼び込むことができます。この客引きに相当するものが官能基であり、官能基の中で最もよく用いられるものがオクタデシル基というものです。
 オクタデシル基とは炭素が18個つながったもので、化学式で表せば次のようになります。
 ここで、Cは炭素、Hは水素を表します。同じことをもう少し簡単に表すと次のように表すことができます。
 -CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH3
 また、オクタデシル基という代わりにCが18個あることからC18基ということもあります。 (そもそも、オクタデシルというのは18のことで、8を表すoctaと、10を表すdeciからできた用語です)
 このような、炭素と水素からできた鎖がシリカゲルの表面に無数についています。上のような式で表すとかなり長い鎖のようにも思えますが、シリカゲルの粒径に比べれば十分に小さく、1つのシリカゲルに無数の鎖をつけることができます。この鎖は、シリカゲルの孔の中の表面にもついています。
 「飲み屋横町」の場合は、人によって客引きにまとわりつかれた時に客引きを全く相手にしない人と客引きに誘われて店に入る人に分かれます。試料がインジェクタから注入され、カラムに入った時にも鎖と各成分との相互関係によりカラムから出てくる時間が成分毎に異なります。これをもう少し化学的な言葉でいえば、「ゲルとサンプル中の成分間の親和力により分離が行われる」ということができます。この親和力は分配または吸着といわれ、このような分離モードを分配・吸着モードと呼ぶこともあります。正確には、分配・吸着モードの1つが逆相モードです。
 シリカゲルを基材として、これにオクタデシル基を結合したゲルのことをODS(OctaDecyl Silica)ゲルと呼びます。また、ODSゲルを充てんしたカラムをODSカラムといいます。 (C18カラムということもありますが、ODSカラムの方が一般的です)シリカカラムの中でODSカラムの割合は圧倒的に多く、シリカカラムの約80%はODSカラムです。
 ODSカラムの場合、C18基が結合できるところにすべてにC18基がつけば良いのですが、実際にはC18基がつかないまま残された部分があり、これを残存シラノール基といいます。残存シラノール基をそのまま放置すると分離に影響を与えるためエンドキャッピングという処理を行って、残存シラノール基が働かないようにします。エンドキャッピングしたゲルは一般的には高品質であり、現在ではエンドキャッピングしたゲルが主流です。しかし、試料の種類によっては、残存シラノール基があった方がかえって良い結果を生む場合もあり、この辺りがHPLCの難しいところです。

10-2.その他のシリカカラム
 逆相カラムではODSカラムが最も一般的ですが、C18基は鎖の長さが長く、効率が良すぎてカラムの中にサンプル中の成分が長く留まり、測定時間が掛り過ぎることがあります。分離ができても測定時間があまりにも長すぎては実用的ではありません。このような場合は鎖の長さがもっと短い官能基をつけたものを用いた方が効果的です。そのような官能基としては次のようなものがあります。

  C8:オクチル基    -CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH3
  C4:ブチル基      -CH2CH2CH2CH3
  C3:トリメチル基  -CH2CH2CH3

 この他にフェニル基、シアノプロピル基などが結合されたシリカゲルを充てんしたカラムもあります。

10-3.ポリマーカラム
 上にも述べたように逆相カラムとしてはODSカラムが圧倒的に使用されていますが、最近ではポリマー系のカラムも用いられるようになってきました。 一般的にポリマーカラムの特長とされている点は次の通りです。
1)寿命:
 ポリマーゲルはシリカゲルに比べて安定と言えます。使用の頻度にもよりますが、シリカカラムでは3ケ月程度で交換するのが一般的ですが、ポリマーカラムでは1年以上使用できることもめずらしくありません。
2)再現性:
 シリカゲルは製造ロット毎に品質がばらつきやすいですが、ポリマーゲルはシリカゲルと比較して製造工程をコントロールすることが容易であり、品質のばらつきが少ないことが特長です。ユーザーの立場としては、カラムを買い替えた場合に以前のカラムと同じ測定結果を得ることを期待しますので、ロット毎の品質のばらつきの少ないカラムが求められます。
3)アルカリ条件:
 一般的にシリカカラムはアルカリ性の溶離液では使用できません。塩基性医薬品など試料によってはアルカリ性溶離液を使用しないとうまく分離できないものもあり、このような試料の分離にはポリマーカラムが有効です。また、カラムの中に不純物が溜まりカラムが使用できなくなることがあります。シリカカラムでは廃棄するしかない場合でも、ポリマーカラムならアルカリ性の溶液で洗浄して不純物を取り除き再生できることがあります。
4)分離性能:
一般的にシリカカラムに比べてポリマーカラムの分離性能はやや劣るといわれています。
5)価格:
一般的にシリカカラムに比べてポリマーカラムは高価格のものが多いです。
 ポリマーカラムには1)~3)に挙げたような利点があるにもかかわらず、シリカカラムに比べるとあまり多くは使用されていないのが実情です。5)の価格についてはポリマーカラムの価格も徐々に低下してきており、1)で説明した寿命の点を考えれば必ずしも高価格とは言えません。一番の問題は4)の分離性能の点ですが、最近のポリマーカラムの性能は向上しており、性能的にシリカカラムに近づいており、シリカカラムと比べて遜色ないものになってきています。
 Shodexでは逆相ポリマーカラムに力を入れて開発を行っています。Shodexのポリマーカラムのうち最も広く使われているカラムは、ODPカラムです。これは、ポリマーゲルにオクタデシル基を結合させたものでOctaDecyl Polymer の略です。このネーミングは、ODSカラムのユーザーにはシリカのSがポリマーのPに変っただけなので、理解し易く非常に親しみやすいものといえます。
 Shodexの逆相ポリマーカラムで次によく使われているのがDE-413です。このカラムはポリメタクリレートというポリマーゲルが基材で、これまでの逆相用のゲルと違って官能基がついていないゲルを用いている点が特長です。ODPとDE-413のどちらを使うべきかは試料の種類によりますので、Shodexのアプリケーションをご参考ください。

11.順相カラム
 逆相カラムに続いて順相カラムについて説明します。逆相と順相を厳密に説明するのは化学的に難しくなりますので、ごく概念的に簡単に説明します。
  液クロに用いられる溶液やゲルには極性の大小があります。水と油は混ざり合わない代表的な例ですが、水のようなものを極性が高いといい、油のようなものを極性が低いといいます。官能基のつかないシリカゲルそのものは極性が高いですが、C18基がつくと極性が低くなります。油は炭化水素といってCとHでできており、このようなものは極性が低くなります。ODSの場合はシリカがオクタデシル基で覆われていますので極性が低くなっています。一方、水はO (酸素)とHでできており、このようなものは極性が高くなります。逆相モードは、ゲルに極性の低いもの (ODSゲルなど)を使い、溶離液には極性の高いもの (水やアセトニトリルなど)を使います。一方、順相モードは、ゲルに極性の高いもの (シリカゲルなど)を使い、溶離液には極性の低いもの (ヘキサン、クロロホルムなど)を使います。
 極性が高い低いという言い方の他に親水性・疎水性という言い方もHPLCではよく使います。水に溶け易いものつまり極性の高いものを親水性といい、油に溶け易いものつまり極性の低いものを疎水性といいます。
 液クロの初期の時代には、オクタデシル基のような官能基を結合したシリカゲルはまだ開発されていませんでしたので、官能基のつかないシリカゲルそのものをカラムに詰めて使用していました。つまり、歴史的には順相モードの方が先に使われていた訳で、この方法に「順相」という名前がつけられ、後から開発された逆相モードに従来のやり方とは逆の原理を使っているという意味で「逆相」という名称がつけられました。
 現在では逆相モードの方が圧倒的に多く使われており、現時点の基準では逆相モードの方が一般的な方法で、順相モードの方が一般的な方法と逆の方法と言えますが、歴史の順序を覆すことはできず、逆相・順相という言い方が定着しています。
 順相モードに使われるゲルには、官能基のつかないシリカゲルそのものの他、官能基としてアミノプロピル基 (NH2基)を結合したシリカゲルなどがあります。アミノプロピル基を結合したカラムはアミノカラムとも呼ばれ、糖類の分析などの順相モードでの分析に広く用いられています

12.HILICカラム
 HILICモードは親水性相互作用クロマトグラフィといい、分配・吸着モードの中で比較的新しい考え方の分離モードです。HILICモードはゲル表面が高極性であることから順相モードの1つと考えられています。基材はシリカやポリマーがあり、アミド基やアミノ基、シアノ基など様々な官能基がつきます。HILICモードで使う溶離液は水とアセトニトリルの混合液のように逆相モードの溶離液と似ています。極性が高過ぎて逆相モードでは保持されない高極性物質はHILICモードを使用することで逆相モードで用いる溶離液と近い条件で分析することができます。この特長を生かし、HILICモードは糖分析によく用いられます。Shodexではポリマーにアミノ基を結合したゲルを充てんしたNH2Pカラムを用意しています。アミノ基を表すNH2とポリマーのPを組み合わせたもので、シリカのアミノカラムに親しんだユーザーには覚え易いネーミングになっています。 NH2Pカラムは逆相ポリマーカラム同様、シリカカラムと比べて寿命が長く、アルカリ耐久性に優れています。

13.分配・吸着カラムのまとめ
 逆相・順相・HILICカラムを総称して分配・吸着カラムと呼ぶことは前に説明しましたが、カラムの性質・選択方法を理解するのには (図-8)が便利です。
 図の横軸はゲルの極性で右にいくほど極性が低くなります。つまり、右の方にあるゲルは逆相モードで使用されるゲルで、左の方にあるゲルはHILICや順相モードで使用されるゲルとなります。中間のゲルは場合によって逆相でも順相でも使用できます。  図の縦軸はゲルの細孔径 (ポアサイズ)で、分子量の大きい試料には細孔径の大きいゲルを、分子量の小さい試料には細孔径の小さいゲルを用います。例えば、タンパク質は分子量の大きい試料ですので細孔径の大きいゲルを使います。

(図-8)



14.イオン交換カラム
 磁石でNとSとを近づけるとくっつき、NとNまたはSとSとを近づけると反発するということはご存知だと思います。電気の場合も同じようなことが起こります。+ (プラス)の電気をもったものと- (マイナス)の電気をもったものは引き合い、+と+または-と-は反発し合います。化学物質はイオンという形のものになると電気を帯びることになります。+のイオンを陽イオン、-のイオンを陰イオンといいます。
 イオン交換モードでは、このイオンの引き合う力、反発し合う力をを利用して分離を行います。磁石の場合とイオンの場合とで違うのは、磁石のNはいつでもNで、SはいつでもSですが、タンパク質のような物質は、溶解している溶液との関係で陽イオンになったり陰イオンなったり変化します。そこで、溶離液の電気的性質を徐々に変化させていきますとサンプル中の各成分の電気的な強さはそれぞれ異なりますので、溶離液の性質の変化に伴って各成分が陽イオンから陰イオン (またはその逆)へと変化して、ゲルと引き合っていたものが反発し合うというように変化します。ゲルと反発し合うようになった成分はカラムから出てきますので、各成分イオンの電気的強さの順にカラムから溶出して分離されます。
 このように、イオン交換モードでは溶離液を徐々に変化させて分析を行うのが一般的で、溶離液の性質を徐々に変化させる方法をグラジエントといいます。グラジエントを行う場合には、2つの溶液を用いてその混合割合を時間と共に変化させる方法が最も多く用いられており、最近のポンプにはグラジエントの機能が内蔵されているものもあります。グラジエントに対して溶離液を変化させない方法をイソクラティックといいます。
 イオン交換カラム用のゲルとしては、基材に陽イオンまたは陰イオンの官能基を結合したものを用います。よく使われる官能基には次のようなものがあります。

 QA基   : 第4級アンモニウム基   強陰イオン交換基
 DEAE基 : ジエチルアミノエチル基 弱陰イオン交換基
 SP基   : スルホプロピル基    強陽イオン交換基
 CM基   : カルボキシルメチル基  弱陽イオン交換基 

 先に述べたように充てん剤用のゲルは、一般的に孔の開いたポーラスゲルを使用しますが、イオン交換の場合には粒径の小さい (2.0~2.5μm)孔の開いていないゲルを使用することがあります。この孔の開いていないゲルのことをノンポーラスゲルといいます。ノンポーラスゲルは高速分析 (短時間分析)に威力を発揮します。
 イオン交換カラムにもポリマーカラムとシリカカラムの両方がありますが、溶離液条件にアルカリ溶媒を使用することもあり、逆相カラムのようにシリカカラムが圧倒的に多く用いられている訳ではなく、ポリマーカラムを使用する割合も高くなっています。イオン交換カラムは、タンパク質、核酸等の生化学関連分野で多く用いられています。

15.配位子交換カラム
 配位子交換カラムの場合は、イオン性の官能基を結合したゲルを使用していますが、官能基の先端に金属イオンが結合しているのが特長です。この金属イオンのことを対イオン (またはカウンターイオン)といいます。
 配位子交換モードは、主に糖類の分離に用いられますが、+の電気を帯びた (陽イオン化した)金属イオンと-の電気を帯びた試料中のOHイオン (OとHが結合した陰イオン)との引き合う力を利用して分離を行います。試料中のOHイオンの数やOHイオンの位置関係がサンプル中の各成分で異なることを利用して分離を行います。
 対イオンとしては、カルシウム (Ca2+)、鉛 (Pb2+)、亜鉛 (Zn2+)、ナトリウム (Na)などが用いられます。また、配位子交換モードだけで分離が行われる訳でなく、分配・吸着モードやこれから説明するサイズ分離モードとの組み合わせで分離が行われます。

16.イオン排除カラム
 イオン交換カラムの場合は、陽イオンと陰イオンの引き合う力を利用して分離を行いますが、イオン排除モードの場合はゲルと試料中の各成分の陰イオン同士の反発し合う力を利用します。
 イオン排除モードは単独では用いられず、分配・吸着モードなどと組み合わせることにより、分配・吸着モードでのカラム内に成分を留める力とイオン排除モードでの反発によりカラムから出ようとする力のバランスによって分離を行います。
 イオン排除モードは、有機酸などの分析に用いられます。