Shinoセンパ~イ!スクリーニングって、合格か不合格かを決める方法ですよね。
検体数が多い時に全検体を精密分析をしていたら時間がかかるわよね。そんな時に、大まかに合否を決めた後で、「合格間違いなし」という検体を除いて、残りを精密分析すれば効率的でしょ。この「大まかな合否判定」がスクリーニングという方法なのよ。
スクリーニングには、どんな方法があるんですか?
ELISAやイムノクロマトがよく使われるわね。
両方とも抗原抗体反応を利用するんですよね。何が違うんでしたっけ?
ELISAは簡易定量法だけど、イムノクロマトはある値を超えているかどうかを判定する方法なの。抽出時間を除いて考えると、イムノクロマトは7分くらいで結果が出るけど、ELISAだと4倍くらい時間がかかるという感じね。
ELISAは結構時間がかかるんですね。でも、定量できるのは魅力ですよね。
ELISAは手操作が多いから、あなたには訓練が必要かな。
え? それなら、今回はイムノクロマトだけにします。
(危ない! 残業になるところだったわ・・・)
アフラトキシンのイムノクロマトAgraStripを例にとって説明しましょう。判定は、線がでるかどうかで決めるのよ。
ふーん、pH試験紙みたいなんですね。コントロールラインっていうのは基準で、テストラインっていうのがサンプル由来の結果を示すってことかしら。
その通りよ。マイクロウェル中の反応液を試験紙に毛細管現象で吸い上げさせるのね。だから、上側にあるコントロールラインが出れば、反応がうまくいっているという証明になるの。
その反応っていうのが、抗原抗体反応なんですね。
抗原抗体反応が起こっても、普通は目に見えないわよね。例えばELISAの場合は酵素を使って発色させてるんだけど、イムノクロマトはどうやって可視化していると思う?
ラインの色が、赤紫色だってことに関係ありますか?
よいところに気がついたわ。金コンプレックスを使ってるの。
菌コロニー? 真菌のことですか?
金コンプレックス。ゴールドのことよ。金ナノ粒子は水溶液にすると赤色を示すの。だから抗体に金ナノ粒子を結合させて目に見えるようにしてるんだって。
金って赤いんだ。知らなかったわ。金ナノ粒子が集まって赤紫色の線が見えるんですね。
金コンプレックスがどこに仕込んであるのか、AgraStripキットの付属部品を調べてみましょう。
試験紙の赤は違いますよね。あ、マイクロウェルの底が赤いわ。ここに金コンプレックスが塗ってあるんですね。
マイクロウェルには2種類の金コンプレックスが入っていてひとつはアフラトキシンと反応し、もうひとつは試験紙のコントロールラインに塗ってある抗IgG抗体と反応するのよ。
抗アフラトキシン抗体-金コンプレックスが、テストラインの抗原と結合するんですね。
コントロールラインでの抗原抗体反応は、アフラトキシンと関係ない反応だってこともわかったでしょ?
抗原抗体反応のコントロール群って訳ですね、わかります。
具体的に考えてみましょう。非汚染のサンプルの場合は、マイクロウェルの中の抗アフラトキシン抗体-金コンプレックスは、試験紙のテストラインにある抗原と結合します。
だから、陰性の場合はテストラインが発色するんですね。
これに対して、高濃度汚染サンプルの場合は、抗アフラトキシン抗体-金コンプレックスはサンプル中のアフラトキシンと結合してしまうので、試験紙のどこにも留まらず、一番上の吸収パッドまで行ってしまいます。
だから、陽性の場合はテストラインに線が出ないんですね。
そう、テストラインでの反応には競合イムノクロマトの原理を利用しているの。陰性の時に出るテストラインの色の濃さは、仕込んである金コンプレックスの量に比例するのよ。
つまり、4ppbのキットに比べて20ppbのキットでは 5倍量の金コンプレックスが入っているんですね。ってことは境界値が4ppbのキットではテストラインの色が薄いってわけか・・・
コントロールラインの色はどうかしら?
一定の色を示すはずです。(簡単、簡単)
では、取扱説明書を見ながら操作手順を辿ってみましょう。
よく粉砕した食品10gに、70%メタノールを20mL加えて1分間振とうしてアフラトキシンを抽出します。
上清をろ過して、試験溶液を作ります。
マイクロウェルを取り出して希釈液を50μL加え、金コンプレックスが剥がれるように、5回ピペッティングします。
5回というより、少々泡立ってもいいから金コンプレックスが剥がれるようにしっかりピペッティングしてね。
- ※少々の泡は問題ありませんが、泡立て過ぎると金コンプレックスが泡の表面に残ってしまうことがあります
わかりました。金コンプレックスをしっかり剥がしたウェルに、試験溶液を50μL加えて3回ピペッティングして、軽く混合してから、試験紙を立てるんですね。
5分後には結果が出るわ。
5分以上経過するとダメですか?
最低5分は必要っていうだけ。5分以上置いても大丈夫よ。でも、実験は一定の時間で実施する方がいいわね。
結果はすぐ読まないといけませんか?
ラインの色は何でできてるんだっけ?
ゴールドです。そうか、金だから褪色しないんですね。
試験紙はプラスチックの板と多孔質のフィルムでできてるの。このフィルムが剥がれない限り,色は保存できるはずよ。試験紙の表面が傷つかないように、セロテープで表面を覆うように報告書に貼り付けておけば、結果を保存できるわ。
AgraStripは、どんな食品にも適用できますか?
トウモロコシのような穀類やナッツ類はOKね。
香辛料もできますか?
やってみたけど、沈澱しちゃってダメだったわ。
実はクリーンアップ用カートリッジを開発したんですが・・・
開発者さん、何のクリーンアップ?
70%メタノール溶液中の測定妨害成分をトラップするカートリッジです。もちろんアフラトキシンはそのまま通過します。Autoprep MF-S(エムエフ エス)という新製品です。
クリーンアップした液は、HPLCでも測定できます?
HPLC用には使えません。MF-Sは、イムノクロマトでの反応妨害成分を除去するためのカートリッジなんです。
トウモロコシでイムノクロマトの練習をしようと思ってたけど、香辛料もやってみる?
MF-Sを香辛料に使う時に、注意すべき点はありますか?
香辛料の場合は、通常の2倍量の溶媒で抽出します。
(通常: 食品10g+70%メタノール水溶液 20mL
香辛料の場合: 香辛料10g+70%メタノール水溶液40mL)
ってことは、4ppbキットの境界値が、8ppbになるってこと?
そうです。通常量での抽出だと効果が無かったんです。
感度が下がるのは嬉しくないけど、ま、仕方ないか。
MF-Sはコンディショニングしないで使うんですよね。香辛料の抽出液を1mL処理するんですね?
妨害の少ないサンプルの場合は1mLまで処理できますが香辛料は0.6mL処理が適当だと思います。
さて、1時間後
トウモロコシはMF-Sなしで、簡単に測定できました。
よかった。食安監発第0713001号(平成18年7月13日付)で、トウモロコシ中のアフラトキシン試験にAgraStripは推奨されているんだもの。ちゃんと出来て安心したわ。
カレー粉の方も、8ppb汚染相当品がチェックできましたよ。ただし、反応時間は10分まで延長した方が ラインがはっきり見えました。
この他のメリットとして、AgraStripは室温保存(2~25℃)が可能です。ELISAのような酵素反応が関与していないので、室温で保存しても大丈夫なんです。
他の香辛料もイムノクロマトで試してみま~す。(スクリーニングって簡単です。好きになりそう・・・)
品名 | 境界値(注1) | 本数/箱 | カタログナンバー |
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AgraStrip Afla 4 | 4ppb | 24 | RA129040 |
Autoprep MF-SNEW | (注2) | 30 | R9083000 |
- ※製品情報はこちら。
- (注1)境界値10ppb、20ppbの製品もあります。
- (注2)多機能充填材 500mg/1mLシリンジタイプカートリッジ
AgraStripは、Romer Labs社の商標です。