正しいSEC測定のために

SECは、充てん剤の微細孔径を利用して試料の分子サイズの差によって分離する液体クロマトグラフィーです。SECでは『充てん剤と溶質 (試料)間に相互作用がない』ことを基本要件としています。この要件は『充てん剤と溶質間に相互作用を生じさせない溶離液の選択』によって満たされることになります。疎水性、親水性、極性、非極性、イオン性、非イオン性など様々な溶質特性の相違に対応するSEC分析を行うためには溶離液として使用する溶媒に適したカラムの選択が必要となります。

SECによる分離の特徴

(1) 充てん剤と溶質間に相互作用がないものとして取扱われます(SEC特有)。
(2) この相互作用の有無は、溶質に対する充てん剤と溶離液として用いる溶媒との疎水性(または親水性)のバランスが大きな作用因子となります。
(3) 分子サイズの大きい溶質から順次溶出します。
(4) 充てん剤の最大微細孔径より大きい溶質は微細孔より排除されるので分離できません。この排除限界を排除限界分子量(exclusion limit)と呼び、SECカラムで測定できる溶質の分子量の上限を表します。
(5) 排除限界分子量に対応するクロマトグラム上の溶出容量をゲル粒子外部容量と言い、Vo(void volume)の記号で一般的に取り扱われます(重要な特性)。
(6) カラム中のゲルの総微細孔の容量をゲル粒子内部容量と言い、Vi(inner volume)で表し、SECモードに基づく溶質の溶出容量はすべてVoから(Vo + Vi)の範囲内にあります。

SEC分離の阻害要因

分子量情報を取扱うSEC分析の最大の課題はSEC溶出条件の確立にあります。広く普及しているポリスチレンや中性糖のSEC分析では公知の方法で何等問題なく実施できますが、様々の試料を扱っていますとSEC溶出から逸脱したクロマトグラムや再現性の著しく欠如した分析結果に悩まされることが少なくありません。
右図にSEC分析の基本となる較正曲線と正常なSEC溶出から逸脱した溶出例を示しました。正常にSEC溶出した較正曲線を実線で示し、相互作用を受けたケースの較正曲線を破線で表示しています。正常なSEC溶出は前記の通りVoから(Vo + Vi)間に溶出することが必須要件となります。

(A)のケースはVoより早く溶出しています。この原因として次のものが考えられます。
●イオン性ポリマーの分析に際してポリマー鎖の伸び縮みの問題(Vo + Vi)間に溶出しているクロマトグラムであっても、再現性が著しく欠如している場合にはこの問題を疑ってみる必要があります。イオン性基を有する親水性ポリマーの分析をご参照ください。
●溶質分子の会合による肥大化が起きている場合にも同じ現象が起きます。
●充てん剤とのイオン反発による排除が起きている場合もあります。

(B)および(C)のケースは溶質が充てん剤よって吸着されたときの現象です。この吸着は主として疎水性または親水性相互作用により起こりますが、水素結合、イオン結合等による場合もあります。これらの吸着を防止する方法としては次のような方法があります。
●疎水性または親水性相互作用を排除するには溶質に対する溶解性と充てん剤に対する親和性のより高い溶媒を選択します。
●一部の疎水性ポリマーはLiClやLiBrのような塩を加えることによって溶解性を高め、吸着を解消できる場合があります。
●-COO-基などの弱イオン基を有するポリマーの場合、その解離度の違いによってポリマーの親水性が大きく変化する場合があります。この場合には緩衝液を使用してイオン性基の解離度を一定化する必要があります。

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