第6部:HPLC用機器
目次
30.HPLC用検出器
30−1.紫外、可視、フォトダイオードアレイ検出器
30−2.示差屈折率検出器
30−3.その他の検出器
30−4.蒸発光散乱検出器
30−5.多角度光散乱検出器
31.その他のHPLC用機器
31−1.脱気装置
31−2.ポンプ
31−3.カラム恒温槽
31−4.ダンパー
32.専用HPLCシステム
32−1.高性能GPC専用システム
30.HPLC用検出器
HPLCでは、試料中の各成分の分離はカラムのなかで行われますが、これを目に見える形に変換しなければなりません。検出器はカラムで行われた分離の結果を電気信号として取り出すためのものです。HPLC用として用いられる検出器には次のようなものがあります。
| 名称 |
別の名称 |
| @紫外検出器 |
UV(Ultra Violet)検出器 |
| A可視検出器 |
VIS(Visible)検出器 |
| Bフォトダイオードアレイ検出器 |
PDA(Photo Diode Array) 検出器 |
| C示差屈折率検出器 |
RI(Refractive Index)検出器 |
| D電気電導度検出器 |
CD(Conductivity) 検出器 |
| E蛍光検出器 |
FL(Fluorescence)検出器 |
| F電気化学検出器 |
EC(Electro Chemical)検出器 |
| G化学発光検出器 |
CL(Chemiluminescence) 検出器 |
| H旋光度検出器 |
OR(Optical Rotation)検出器 |
| I蒸発光散乱検出器 |
ELS(Evaporative Light Scattering)検出器 |
| J多角度光散乱検出器 |
MALS(Multi Angle Laser Light Scattering)検出器 |
以下、これらの検出器について説明いたします。
30−1.紫外、可視、フォトダイオードアレイ検出器
UV検出器はHPLCで最も一般的に用いられている検出器で、HPLC装置が1台あればUV検出器も1台あるといっていいぐらいに普及しています。HPLC装置の総数に対するUV検出器の台数は90%を越えています。
試料をガラスでできた透明な容器(これをフローセルといいます)に通し、ここに紫外線を当てると試料により紫外線の一部が吸収されます。したがって、試料の全く含まれていない溶離液だけの場合と、試料が溶離液に含まれている場合とで、フローセルを通過する紫外線の強さが変わってきますので、この通過後の紫外線の強さを測定することにより試料がセルを通過したことを検出できます。紫外線の吸収
の度合いは紫外線の波長により異なりますので、試料の種類により適切な波長を選択する必要があります。通常のUV検出器では195〜370nm(nm:ナノメートル=十億分の1メートル)程度の範囲で変えることができます。
紫外線の代わりに可視光線を用いたものが、VIS検出器で400〜700nm程度の波長が選択できます。また、1台で紫外線から可視光線の範囲の波長を選択できる、UV/VIS検出器(紫外・可視検出器)もあり195〜700程度の範囲で波長の選択ができます。
PDA検出器は、光源からの光をフローセルを通過させた後、回折格子で分光し、100〜1024個のフォトダイオードアレイ素子に当てることにより検出を行いますので多波長同時分析が可能です。UV検出器または可視検出器の場合は、(光線の強さ)と(時間)の二次元で表示されますが、PDA検出器の場合はこれに(波長)を加えた三次元で表示されます。最適な波長を求めるために測定を繰り返す必要がなく便利な検出器です。
30−2.示差屈折率検出器
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| (図−18) |
RI検出器は光の屈折率の変化を検出します。容器の中に水を入れると、屈折率の変化により容器の底が浮き上がって見えてくる、という経験は皆様お持ちのことと思います。この光の屈折率は物質により異なります。
そこで、ガラスのセルを2つに仕切り、一方(サンプルセルといいます)にはカラムからの溶離液を 流し、他方(リファレンスセル)には溶離液のみを封入します。
サンプルセルに流れている溶離液に試料中の成分が含まれていない場合は、両方のセル内の液が同じですので(図−18)のa)のように光は直進しますが、サンプルセルに流れている溶離液に試料中の成分が含まれている場合は、両方の液の屈折率の差によりb)のように光が曲がります。したがって、この変化を検出することにより試料中の各成分がセルを通過したことを検出できます。
RI検出器は検出感度がUV検出器に比べやや劣るとされこれがUV検出器に比べ普及していない大きな理由ですが、UV検出器にない次のような特長を持っています。
@どんな試料にも用いられる
UV検出器は、紫外線を吸収しない試料(糖、アルコール、無機イオンなど)は検出できません。これに対し、屈折率の変化はどのような試料の場合でも起こりますので、RI検出器はどのような試料にも使用できます。
AUV吸収のある溶離液でも使用できる
溶離液が紫外線を吸収してしまう場合はUV検出器は使用できません。GPCに用いられる有機溶媒の場合にはUV吸収がある場合があるのでUV検出器は使用できないことがあります。
Bピークの大きさと成分の含有量に相関がある
UV吸収の大きさは各成分によって異なります。したがって、UV吸収の大きい成分の場合は、含有量が小さくても大きな(高さの高い)ピークがえられ、UV吸収の小さな成分の場合は、含有量が大きくても小さな(高さの低い)ピークがえられます。したがって、ピークの大きさによって含有量を求めることはできません。屈折率の場合はこのようなことが比較的少なく、ピークの大きさは各成分の含有量の目安になります。
このような特長から、RI検出器は糖の分析およびGPC分析によく使用されます
30−3.その他の検出器
CD検出器は、ノンサプレッサ法のイオンクロマトグラフィの検出器として使用されます。通常のHPLCに検出器としてCD検出器を用い、イオンクロマトグラフィ用カラムを使用することによりノンサプレッサ法のイオンクロマトグラフィを行うことができます。
FL検出器、EC検出器いずれも高感度検出器で、試料中の目的成分の含有量が微量でUV検出器では十分な検出ができない場合に使用されます。CL検出器はFL検出器と同じような応用分野に使用されますがFL検出器より更に高感度な検出器です。
OR検出器は光学分割専用の検出器です。26で説明したように光学異性体は右旋性、左旋性の2種類に分類されます。カラムで光学異性体を2つのピーク成分に分離した後、UV検出器等で検出した場合にはどちらのピークが右旋性でどちらのピーク成分が左旋性かは分かりませんが、OR検出器を用いればピークが右旋性か左旋性かを直接知ることができます
30−4.蒸発光散乱検出器
原理的には、溶離液を蒸発させて残ったサンプルに光を当ててその散乱光を測定します。対象となるサンプルは、脂質、糖、高分子等で、RI検出器と同じような用途に用いられますが、RI検出器より高感度と言われています。また、RI検出器では検出できないグラジエントでの検出にも利用できる点が特長です。
30−5.多角度光散乱検出器
GPCでは検量線を作成して分子量を求めますが、光散乱検出器を用いれば分子量を直接測定できます。
31.その他のHPLC用機器
31−1.脱気装置
常温では水の中に気体が含まれていることは分かりませんが、水を沸かす時に沸騰に近づくと気泡が出てくることからも分かるように、一般に液体中には気体が溶け込んでいます。HPLCの溶離液として使用される溶媒にも通常は気体が溶け込んでおりますが、このような気体が存在すると検出器での検出の際にノイズの原因となりますので、溶離液からこのような気体を取り除くことが重要となります。従来は使用する前に溶離液に混入している気体を除去して使用する方法がとられていました。除去の方法としては、ヘリウムガスを使用したり、アスピレターという機器を使用したりして脱気を行っていましたが、溶離液を使用する度に脱気を行うのは面倒でもあり、また一旦脱気を行った溶離液を使用しても使用中に気体が徐々に溶け込むことがあり不便でした。 脱気装置(正式には「溶存ガス除去装置」といいます)は特殊な高分子のチューブを用いて脱気を行います。高分子のチューブには非常に細かい孔が開いており、液体は通過できませんが気体は通過できます。このチューブを真空ポンプで減圧した容器の中に置いておきますと、チューブ内の圧力に比べて外部の圧力が低いので気体は圧力の低い所に出ますので、チューブの細かい孔を通って気体がチューブの外に出て脱気が行えます。
脱気装置を用いれば溶離液の脱気が簡単にかつ連続的に行えますので、従来の脱気法に代えて脱気装置を使うお客様が急速に増えてきており、装置メーカーがHPLC装置一式に溶存ガス除去装置を組み込んで販売するケースも増えてきています。
ShodexではERC 社の溶存ガス除去装置Degasserを販売しており、1、2、3、4流路の4種類があります。例えば2流路のDegasserは次のように使用することができます。
@2台のHPLC装置の脱気を1台の2流路Degasserで行うことができます。
Aグラジエントを使用する場合は、1台のHPLC装置で2種類の溶離液を使用しますので2流路のDegasserが必要になります。
B脱気性能を上げたい場合は、2流路を直列に接続して使用することができます。
C当面1流路しか使う予定がない場合でも、2流路のDegasserを購入して1流路は故障の場合のバックアップとすることもできます。
31−2.ポンプ
HPLCの初期の時代は、送液ポンプが最も重要な部品であり、HPLCの開発の歴史はポンプの開発の歴史ともいえます。
現在では、2つのピストン(プランジャーといいます)の動きを組み合わせて、4−1で説明した脈動流を少なくしたデュアルプランジャー(ダブルプランジャーともいいます)方式のポンプが主流です。
31−3.カラム恒温槽
カラムでの分離は温度によって影響されることが多く、糖・有機酸などの分析は50〜80℃程度の高温で行った方が良い分離がえられます。また、常温で行う分析の場合でも分析の度にカラム温度が異なると同じ結果をえることができませんので温度を一定にして分析を行うことが必要になります。このような目的のために、最近ではカラムをカラム恒温槽のなかに設置して分析を行うことが普通になってきています。HPLC一式の装置の中にもカラム恒温槽が含まれていることが多くなってきています。
31−4.ダンパー
HPLC用のポンプは常に一定の流速で溶離液を流せることが必要ですが、4−1で説明したように、実際には多少の脈動が出てきます。ダンパーはこの脈動を減少させるためのもので、ポンプと併用すると脈流を除くことができます。ただし、最近はポンプの性能が向上しており、ダンパーを使用しなくても脈流の少ない高性能ポンプが出回っており、ダンパーを使用する必要はそれほど多くないようですが、古いタイプのポンプを使用している場合や、特に高精度な測定を行おうとしている場合などにはダンパーを使用することが勧められます。
32.専用HPLCシステム
汎用のHPLCシステムでも色々の用途に使用することが可能ですが、用途によっては専用システムとして設計されたシステムを利用した方がよりよい分析を行うことが可能となります。
Shodexでは高性能GPC専用システムを販売しています。
32−1.高性能GPC専用システム
GPCは、一般のHPLCとGPCカラムを使用すれば実施できますが、精度の良いGPC測定を行うためには、専用のGPCシステムを使用した方が良い結果がえられます。
GPC測定では、カラムの温度だけでなく溶離液の流れる流路全体の温度を一定に保つことにより精度の良い測定が可能となります。Shodexのシステムでは、脱気装置の入り口から、検出器の出口までの全流路を温度調節しています。
また、GPCの溶離液として用いられる有機溶媒の場合は、使用中に空気中の水分を吸収し易いので、徐々に溶離液瓶中の溶離液の組成が変わってきます。リファレンスセルに当初の溶離液を封入したままだと、測定中に流れている溶離液の屈折率は変わってきていますので、これがRI検出器で検出する場合のノイズとなります。これを防ぐためにShodexのGPCシステムでは、リファレンスセルにも常時溶離液を流し続けて、RI検出器での検出の際の精度を上げています。したがって、ポンプを2台使用しています。