LC/MS、薬物迅速分析用充てんカラム MSpakシリーズ ニュースレターNo.41

Shino:読者の皆様、40号でご紹介しましたマルチモードカラムへのたくさんのご意見、ご質問をありがとうございました。この秋より、GPCモードとマルチモードのLC/MS用力ラムが揃いました。力ラムの特長を、後輩と一緒に考えてみたいと思います。
LC/MS、薬物迅速分析用充てんカラム MSpakシリーズ
  GPCモード   GF-310 マルチモード    GS-320
充てん剤 ポリ(ビニルアルコール)系ハードゲル 親水性の高いポリ(ビニルアルコール)系ゲル(微量の力ルボキシル基を持つ)
使用可能
な溶離液
水からクロロホルムまで各種溶媒に置換可能 水から、メタノール100%、アセトニトリル50%まで
分離
モード
サイズ分離が基本
水リッチな溶離液では分配吸着モードが効く
サイズ分離が基本
弱い分配吸着、弱いイオン相互作用(イオン交換、ならびにイオン排除モード)が働く
力ラム
サイズ
4.6φx 50mm L,4.6φx150mm L, 2.0φx150mm L
(その他の力ラムサイズについては、ご相談ください)
後輩 :Shinoセンパイ、GF-310もGS-320も分離の基本は、サイズ分離モードなんですね(図1)
Shino :だから、血清中の薬物をそのまま分析できるのよ(図2)。

(図2) 血清中の薬物分析

Sample : 2μL
1. Control serum I(from Wako Chemicals Indusries, Ltd.)
2. Phenobarbital

Column : Shodex MSpak GF-310 4B (4.6mmID*50mm)
Eluent : 50mM CH3COONH4/CH3CN=70/30
Flow rate : 0.25mL/min.
Detector : UV(220nm)
Column temp. : 30℃

後輩 :血清中のタンパク質のような高分子成分が始めに溶出される訳ですね。そこで力ラムスイッチングして、薬物の溶出分画だけをLC/MSに導入できるから、前処理なしで血清中の薬物が測定できるんですね。
Shino:しかも、分配吸着やイオン相互作用が働くといっても、分離の基本はサイズ分離だから、力ラムに強固に保持される成分が少ないの。つまり、力ラムの汚染が少なくて寿命も長いってこと。
後輩:でもぉ〜、GF-310とGS-320をどうやって使い分けたらいいのかしら?
Shino :例えば、イオン性の物質の時は、イオン相互作用のあるマルチモードカラム(GS-320)の方が適しているわね(図3)。 アミノ基を持つプロプラノロールは、GS-320カラムの方が遅く出てくるでしょ。これは、GS-320カラムに付いたカルボキシル基に由来するイオン 交換モードが働いてるからなの。

(図3) 各種薬物の分析例

Eluent : 30mM CH3COONH4/CH3CN=70/30
Flow rate : 0.25mL/min
Detector : UV(220nm)
Column temp. : 40℃

後輩:イオン交換モードを期待するなら、除タンパク後、イオン交換カラムで測定する方が効率的だと思うわ。そうすれば、カラムスイッチングもいらないし。
Shino:最終目標は、何でしたっけ? LC/MS検出でしょ?
後輩 :そうでした。このデータ、UV検出なんだもの、勘違いしちやったわ。 LC/MSに導入するためには、溶離液の塩濃度を下げる必要がありますよね。それには、GS-320のように弱いイオン交換能の方が便利なんですね。だって、低い塩濃度でサンプルを溶出できますからね。
Shino:わかってきたじやない。だいいち、イオン交換カラムには、目一杯、イオン交換基がついているから、充てん剤表面の親水性が高すぎて、分配吸着モードも期待できないでしょ?
後輩:あ、そこまでは気がつかなかったなぁ。マルチモードたるためには、イオン交換能が低いことも重要なんですね。
Shino:さて、UV検出とLC/MS測定の感度を比較してみましょう(図4)。UV検出できないような濃度でも、 プロプラノロールは検出できてますね。
(図4) 検出法による感度の比較

Column : Shodex MSpak GS-320 4B (4.6mmID*50mm)
Eluent : 30mM CH3COONH4/CH3CN=60/40
Flow rate : 0.25mL/min
Column temp. : 40℃
後輩 :LC/MS測定って、便利なんですねぇ。でも、まだわからないことが...どうしてアセトアミノフェンは、GS-320の方がGF-310より遅く溶出されるんですか? アセトアミノフェンは中性物質なのに。(図-5)
(図5) 各種薬物の分析例

Eluent : 30mM CH3COONH4/CH3CN=70/30
Flow rate : 0.25mL/min
Detector : UV(220nm)
Column temp. : 40℃
Shino:あれぇ、ホントだあ。中性物質なら、サイズ分離と分配吸着が働いているだけのはずだけど...。 力ルバマゼピンやフェノバルビタール、フェニトインの溶出パターンは理解できるんだけどなぁ。
後輩:それなら私だって分かりますよ。疎水性の強い物質だから、GF-310の方がより強く分配吸着モードが効いて、より遅く溶出される訳でしょ。
Shino:それにしても、アセトアミノフェンはわからないなあ。
先輩:Shinoチャン、これらのクロマトで、2.5分付近に出てくるマイナスピークはなんだと思う?
Shino:溶媒のペイカントビークだと思うんですけど。力ラムの較正曲線から計算してみると...、やっぱりトータルパーミエーションの位置ですね。
後輩:GF-310とGS-320カラムの校正曲線を重ね書きしてみます(図6)。 トータルパーミエーシヨンの位置が、GF-310とGS-320のクロマト上のマイナスビークの位置と一致しますね。


(図6) 較正曲線の比較
Shino:トータルパーミエーションの位置から、アセトアミノフェンまでの距離は、GF-310とGS-320でほぼ等しいんだから...
先輩:そう、アセトアミノフェンを保持している力は、GF-310とGS-320で差がないことがわかるよね。
Shino:アセトアミノフェンにはフェノール性のOHがついているから、力ルバマゼピンなんかよりも、ずっと親水性が高いんですね。
先輩:親水性の高い物質は、分配吸着モードが効きにくいため、トータルパーミエーションの位置の近くに溶出されるんだね。今度は、高分子成分との分離を考えてごらん?
後輩:GS-320は、GF-310に比べてポアボリュームが大きいので、高分子成分と低分子物質、特に親水性物質の場合の分離に優れているわけですね。
Shino:つまり、血清中の薬物を分析する時には
  @ イオン性の薬物の場合    GS-320
  A 親水性の高い薬物の場合  GS-320
  B 疎水性の高い薬物の場合  GF-310
というように使い分ければいいんだわ。
後輩:なぁ一んだ。わかってしまえば簡単ですね。
先輩:そんなに簡単かな? イオン性の基と疎水性の強い基を持つ薬物だったらどうする?
Shino:イオン性の基による親水性は、疎水基で相殺されるかもしれないし。
後輩:サンプルの3次元構造によっては、立体障害のせいでイオン交換作用が働き難い場合も考えられますね。
Shino:わかりました!! 力ルバマゼピンとフェノバルビタールは、GF-310とGS-320では分離が違いますよね。これをサンプルの構造式だけからは予測できません。ですから、ODS力ラムを使い分けるように、GF-310とGS-320を使い分ければいいんですね?
先輩:さて、これまでの類推は30mM酢酸アンモニウム/アセトニトリル=70/30というアイソクラティック溶出の場合の話だよね。
Shino:そうですね。もし、血清中に親水性の高い薬物と疎水性の高い薬物が混在していたら、タンパク質が出た後で、有機溶媒濃度を上げてゆくグラジエント溶出すればいいんですものね。
後輩:ということは、第一選択はGS-320ですか?
先輩:GS-320力ラムは、良い力ラムだね。でも使用可能な溶離液範囲が狭いことを忘れちゃだめだよ。サンプルの疎水性がある程度高いようなら、GF-310力ラムの方が適しているね。
Shino:そうですね。今回の例は血清でしたけど、もしこれが脂質の中に溶けている薬物の分析なら、溶離液にアセトン100%を使用したGF-310力ラムが使えそうですね。アセトン100%なら、LC/MSにもGC/MSにも繋げられるし、なかなか応用範囲が広そうですね。
後輩:先輩、ありがとうございました。アセトアミノフェンの謎も解けて、これですつきりお仕事できそうです。
Shino:GF-310とGS-320、上手に使い分けてみたいと思いま〜す。

 LC/MS、薬物迅速分析用充てん力ラムには、この他にも各種モードの力ラムを取りそろえております。詳しくは、LC/MS、薬物迅速分析用カラムをご覧ください。

 本号でご紹介しましたクロマトは、横河アナリティカルシステムズ殿にご提供いただきました。



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