アミノカラムで糖を分析する方に ニュースレターNo.33

後輩 Shino センパイ、新品のアミノカラムなのに、テストクロマトグラムに比べて、とってもピークがブロードなんです。このカラムは不良品なのかしら?
Shinoまず、測定条件を調べてみましょう。
後輩特に、間違っていないと思うんですけど・・・。
        カラム :Shodex Asahipak NH2P-50 4E
        溶離液 :アセトニトリル/水=75/25
        流速  :1.0 mL/min
        検出器 :Shodex RI
        温度  :30℃
        サンプル:フルクトース、グルコース、マルトース、シュクロース 各1%
Shinoサンプルの濃度が高いわねぇ。何に溶かしてるの?
後輩水に溶かしてますけど、ダメですか?
Shino絶対ダメ。取扱説明書のサンプル調製のところ、読んだ?
後輩 えー、取扱説明書ですかぁ。どこかにあると思いますけどぉ。・・・あ、あった。『サンプル調製・・・固体試料は水で溶解後、アセトニトリルを加えて、50%以上のアセトニトリル水溶液とする』って書いてありますけど、こんなの気がつかなかったわぁ。
Shino 糖は水に溶けるわよね。アセトニトリル100%ではどうかしら。
後輩溶けないと思うわ。
Shino 75%アセトニトリルの溶離液の場合は?
後輩やっぱり、溶けないと思います。それじゃあ、カラムの中で糖が析出して、ピークがブロードになったのかしら。
Shinoいい機会だから、ちょっとしたチェックをしてみましょうよ。糖を溶かす液に少しずつ、アセトニトリルを加えてクロマトグラムを比較してみましょう。
(そして、次の日)
後輩 Shino センパイ、不思議!! こんなに違いがあるんですよぉ(図1)。
Shino ついでに理論段数も比較してみましょう。

(図2)
後輩まぁ、アセトニトリルを入れないでサンプル調製するのって、こんなに理論段数が低くなるんですね。やっぱり、水に糖を溶かすだけだと、ダメなんだわ。がっかり。
Shinoそうよ。理論段数が低いってことは、つまり?
後輩分離が悪くなるってことです。
Shino検出感度はどうかしら?
後輩ノイズレベルは変わらないのだから、検出感度が低くなって、分析の精度が落ちるってことですね。
Shino さて、読者の皆様のために。溶離液は75%アセトニトリルなのにどうしてサンプルを溶かす液は65%までしか試さなかったの?
後輩 70%以上のアセトニトリルだと、糖が析出して白濁したんです。
Shino 65%アセトニトリルまでなら、トータル4%程度の糖は析出しなかったのね。これはとっても有用な情報だわ。
後輩 Shinoセンパイ。有用情報をもうひとつ。糖の粉末に直接、65%アセトニトリルを加えても溶けないんですけど、水に溶かしてからアセトニトリルを加えれば、65%までOKでした。
Shino一旦、溶け易い溶媒にサンプルを溶解させてから、溶離液で希釈するっていう方法は、ほら、何か思い出さない?
後輩 う〜ん、デンプンをDMSOに溶かした時ですか? あの時は確かDMSOを加えてから120℃に加熱して溶かしたんですよね。それから溶離液の0.1M硝酸ナトリウム液で希釈してサンプルにしたんでしたっけ?
Shinoあの時も、サンプルの溶かし方で苦労したわねぇ。
後輩でもどうしても、サンプルを溶かす液にアセトニトリルを入れないと、ダメなのかしら。水に溶かしても注入量が少なければ、うまくいくような気がするんですけどぉ・・・。
Shinoまぁ、スルドイわ。やってみましょうよ。
後輩は〜い。
(そして、また次の日)
後輩 このサンプルだと、注入量を5μLまで減らせば、結構いいクロマトが採れてますよ。でも、ほら、30μLだと、ピーク割れしちゃうんですよね(図3)。これって、カラムの入口側に隙間が出来た時みたいなパターンですね。

(図3)
Shino 糖の分析に詳しければ、アノマー分離が起きているんだと思うかもね。こういう勘違いって、原因がつかめなくて苦労するのよ。
後輩わたしの記憶が正しければ、せっかく『アミノカラムは、室温でも糖のアノマー分離が起きにくい』っていう長所があるのに、誤解されちゃいますよね。
Shino そうよね。他のカラムだと、アノマー分離を押さえるには、70〜80℃の高温での測定が必要ですものね。なぜ、アミノカラムだと室温でもアノマー分離が起きにくいと思う?
後輩還元末端のを持つ糖は、αとβアノマーのふたつの形が存在するから、これがカラムの中で分離されるのをアノマー分離っていうんですよね。温度を高くすると、α、β間の変換スピードがとっても早くなって、カラムで分離されなくなるんですよね。でも、アミノカラムの場合はどうして室温でもアノマー分離が起きないのかしら。
Shinoアミノカラムは、充てん剤にアミノ基がついているから、カラム内雰囲気がアルカリ性なの。アルカリ性の条件だと、変換スピードが変化して、アノマー分離が起こりにくくなるみたいなの。
後輩やっぱり変換スピードは早くなるんですか?
Shinoそれはまだ解明されていないみたい。いずれにしてもアミノカラムは、室温でも使用できる、とてもいいカラムなのよ。アミノカラムのような順相や、逆相カラムでのより良い分析のためには、サンプルは極力、溶離液に近い組成の溶媒に溶解しましょうね。

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