HPLCにおける基本動作のチェックリスト ニュースレターNo.31(記事)

長期間停止させていた装置を稼動させる前に、または、初めてHPLCシステムを使用される皆様に、最低限、これだけはご注意いただきたいという点をまとめてみましたので、ご参考になれば幸いです。
 現在ご使用中の測定系から異なる測定系に条件変更される場合(例えばカラムの種類を変更する場合や、非水系から水系の溶離液に変更する場合など)は、必ずHPLCシステム全体を新しい溶離液で充分洗浄した後、『3. カラム接続時の注意』の項目から実施されることをお勧めします。
 なお、皆様の研究室でHPLCシステムの動作チェックを実施される場合にはこのチェックリストだけでは不充分です。必ず各装置やカラムに添付されている取扱説明書をご参照くださいますようお願い致します。

チェック時の基本的な考え方
1) カラムを接続しない状態での装置自体の動作チェックから始めます。万一、装置にトラブルのある状態でカラムに溶離液を流した場合、カラムの性能を低下させる恐れがあるからです。特にカラムより上流側にある装置のチェックに重点を置いてください。
2) 装置に問題がないことを確認した上で、はじめてカラムを接続し、所定のカラム性能が得られるかどうかをチェックします。
3) 1)、2)が完了した後で、分析を開始します。

1. 電源を入れる前に
チェック項目 チェック方法 トラブル時の対策
配管連結部に
緩みはないか?
◆接続部に塩が析出していないかチ ェックする。
◆指で触れてみて(工具を使用せずに)、接続部の
ネジに緩みがないかどうかチェックする。
@塩の析出している接続部は、一旦分解して塩を
洗浄除去した後、締め直す。
A緩んでいるネジは、増締めする。
または必要に応じて新品と交換する。
装置からの液
漏れはないか?
◆装置の底部、装置を置いてある机上に液漏れ、
もしくは塩の析出がないかどうかチェックする。
B接続部以外から液漏れしている場
合は、直ちにメーカーに連絡する。

2. カラムを接続する前のチェック
@電源コードはコンセントに差し込まれているか
チェック項目 チェック方法 トラブル時の対策
全ての装置は作動
するか?
◆電源スイッチをONの状態にしたにした時に、
スイッチランプの点灯または画面への
表示などが 正常に作動するか?
◆自動診断機構の付いた装置の場合は、
診断結果をチェックする。
◆異常音を出していないか?
@電源コードはコンセントに差込まれて
いるか?
A電源コードの断線の有無をチェックする。
Bヒューズが切れている場合は交換する。
Cアラームが出た場合は取扱説明書に
したがってチェックする。
ポンプは送液して
いるか?
◆ポンプ出口から液が吐出されるか
◆ポンプの底面から、液が漏出してこないか。
Dプランジャーが折れている場合は交換する。
Eプランジャー付近から液漏れしている
場合はプランジャーシールを交換する。
ポンプの逆止弁に
損傷はないか?
◆ポンプのアッパーリミッターを20MPaに設定し、
ポンプの出口に密栓をする。
0.1mL/min程度で送液し、すぐに20MPaに到達
して、ポンプが停止するかどうかチェックする。
F圧力が20MPaに到達するのに時間を要する
場合は、ポンプの逆止弁のところで
溶離液が 逆流している可能性があるため、
ポンプヘッドの分解掃除もしくは、
ポンプヘッドの交換をする。
溶存ガス除去装置、
ポンプ、 インジェクタの
接続部もしくは内部配管
の緩みにより、空気を
吸い込んでいないか?
◆インジェクタの出口 (カラムに接続する配管)
に透明なチューブ約1m(内径1mm程度)を
差込んで接続し、 直径10cm程度のコイル状に
巻く。このコイル状のチューブを観察し、気泡が
出てこないかどうかチェックする。
G外部に露出している接続部のネジを
増締めする。
H溶存ガス除去装置やポンプ内部の配管に
緩みが生じている可能性がある場合は、
直ちにメーカーに連絡する。
ポンプの流速は設定値
通りか?
◆10分間の吐出溶液の重さ(または容量)を
計る。これを数回繰り返し再現性をチェックする。
Iポンプヘッドに気泡が入っている場合は、
充分脱気したアセトン等を流して、気泡を除く。
カラム恒温槽は正常に
作動するか?
◆恒温槽の中央部に温度計を差込み温度が
安定した時に設定温度と大きくずれがないか
どうか、 チェックする。温度変動の有無も
チェックする。
J恒温槽内部のファンは回っている か。
K温度が上がらない場合、または昇温の続く
場合はメーカーに連絡する。
検出器の配管に詰まり
はないか?
◆検出器の入口側に溶離液を満たした注射筒
(10mL)を接続し、ゆっくり液を押しだして検出器
に 詰まりがないかどうかチェックする。万一、
注射筒を接続するための器具が手元にない
場合は、 通常の流速の約半分の流速で送液し、
配管での詰まりの有無をチェックする。
◆検出器から吐出される廃液量はポンプの
設定値通りか?
L検出器の配管は内径が細いため塩が
析出して詰まり易い。検出器入口側の配管が
詰まった 場合はカラム圧力が高くなり、
カラムを損傷する恐れがある。また出口側が
詰まった場合は、検出器の内部配管が破裂
する ので、異常がある側の配管を少し
切り落とし、低流速で洗浄する。
M検出器内部での液漏れの可能性がある
場合は、直ちにポンプを止め、メーカーに連絡
する。

3. カラム接続時の注意
 以上のHPLCシステムのチェックを完了後、カラムを接続します。ただし、10日間以上装置を稼動しなかった場合や、 新しい溶離液条件を適用する場合には、カラムを接続する前に、HPLCシステム全体を新しい溶離液で充分洗浄してください。
 必ず、ポンプのアッパーリミッターを『カラムの最大使用圧力×80%』程度の値に設定してください。
 溶離液がなくなった場合や、カラムより上流側での液漏れが生じた際には、急速にカラム圧力が下がります。これを検知してポンプを停止させる機能がポンプのロウアーリミッターです。したがって、ポンプのロウアーリミッターも、通常使用圧力の3分の1程度に設定することをお勧めします。

4. カラムの性能チェック
 カラムの性能は、カラム納入時に添付されている検定チャートが再現できるかにデッドボリュームが少しずつ異なるため、全く同一の結果になる訳ではないことにご注意ください。
チェック項目 チェック方法 トラブル時の対策
カラム接続後、HPLC
システム全体の流路系
にトラブルはないか?
◆カラム接続後、検出器から吐出
される廃液量はポンプの設定値
通りか?
@カラム接続部に緩みがある場合は増締めする。
必要に応じてオシネジを新品と交換する。
A@で解決しない場合は、2の項目を再度チェック
する。
検出器の設定は正しいか? ◆検定チャート中の何れかの成分
(もしくは、その測定条件で必ずピーク
が得られることが分かっている 成分)
をサンプルとして注入し、検出器の
応答があるかどうかをチェックする。
B信号ケーブルが外れていないか、信号ケーブル
の断線の有無をチェックする。
CRI検出器の場合は、リファレンスとサンプルセル
の連結をOFFにする。
DUV、蛍光検出器の場合は設定波長をチェックする。
E検出器のポラリティをチェック する。
カラム性能は低下して
いないか?
◆カラム納入時に添付されている検
定チャートと同一の条件での測定を
実施する。
 カラム圧力は?
 理論段数は?
 ピークの溶出時間は?
 ピークの対称性は?
これらが、ある程度再現できるか?
F再現できない場合は、まずサンプルを作り直す。
それでもだめな場合は溶離液を作り直す。
Gピークがブロードな場合は、まずカラムの出口
および入口のオシネジを新品に交換する。
カラムの種類により、オシネジのフェラル下の長さが
微妙に異なることがある。フェラル下に隙間があく
ような 場合には、ピークがブロードになることがある
ため、新しいオシネジを用いて、隙間ができない
ように接続し直す必要がある。
H F、Gで解決しない場合は、カラムの取扱説明書に
したがってカラムの洗浄を実施する。
取扱説明書に特に指示のない場合は、News Letter
No.2のSOS欄に示したカラム洗浄方法を
お試しください。
検出器のラフチェック
    ↓
検出器の性能のチェックは、
取扱説明書をご参照
ください。
◆ベースラインのノイズが測定を
妨害するか?
ノイズ形状は規則的か?
  (例:サインカーブ)
ノイズの出現頻度は?
I規則的ノイズの場合。
50(60)回/分→アース線断線の有無をチェック。
数10回/分→ダンパーを取付ける。
J不規則なノイズの場合は、溶離液の脱気を
充分に実施する。検出器のランプ寿命が原因だと
思われる場合は、交換する。

Shinoちゃんの液クロSOS一覧