| 後輩 | Shinoセンパイ、助けてくださ〜い。アミノ酸とタンパク質を分析してるんですけど、ピークが出てこなかったり、Voの位置にまとまって出てきたりするんです。 |
|---|---|
| Shino | アミノ酸とタンパク質を同じカラムで分析するのは難しいわよ。それぐらい知ってるよね。 |
| 後輩 | もちろん違うカラムですよ。アミノ酸は専用カラムのCXpak P-421Sを使ってニンヒドリン反応で検出しているし、それにタンパク質の方は、陰イオン交換カラムのDEAE-420Nを使って280nmで検出しています。カラムの選択はあってますよね。 |
| Shino | そうねえ、あってるみたいね。それでピークが、どうしたの? |
| 後輩 | アミノ酸の方は全然ピークが出てこないんです。タンパク質の方はVoの位置にまとまって出てきちゃうんですもの、どっちも変なんです。もう、訳がわからないわ。 |
| Shino | 訳がわからないのは私の方だわ。 アミノ酸の方からいきましょうか。どれどれ……。装置も、溶離液も悪いところはないみたいね。 |
| 後輩 | (1リットルのメスフラスコを差しだしながら)サンプルは、これです。10ナノモルのアスパラギン酸を10μL注入してるんですけど注入量が少ないですか? |
| Shino | それにしても、なんで1リットルも作ったの? |
| 後輩 | 10nMだから、1リットルにアスパラギン酸を1.33mg入れればいいですよね。 |
| Shino | (総合カタログの測定例を見ながら)10nmolの間違いじゃないの? |
| 後輩 | ?? |
| Shino | この測定例から考えると、濃度でいう10nMじゃなくて、絶対量でいう10nmolが正しいみたいだわ。注入する10μLの中に1.33mg入れなきゃ。桁が違うわよ。桁が。 |
| 後輩 | ってことは、私がつくったのは10の5乗も薄いサンプルだったんですね。恥ずかしーい。でも、猿も木から落ちるっていいますよね。 |
| Shino | まったく、もう。調子いいんだから。ところで、タンパク質の方はどうしたの? |
| 後輩 | ノンポーラスのカラム方が分析時間が短いって聞いたから、DEAE-420Nにしたんですけど、Voの位置にしか出てこないなんて、やっぱりノンポーラスって良くないのかしら。 |
| Shino | あら、カラムのせいにしちゃいけないわ。短時間で分析するには、ノンポーラスが絶対に有利なカラムなのよ。ほら、総合カタログでも、測定時間が5分の1になってるでしょ?!ただし、たくさんサンプルを入れるとオーバーロードになっちゃうけどね。確か、注入できるタンパク質の最大量がポーラスなカラムのDEAE=825で1mgぐらいなのに対して、ノンポーラスなカラムのDEAE-420Nでは20μgぐらいだったと思うわ。サンプルは何なの? |
| 後輩 | 血清です。血清中のアルブミンが約5%だから、エート、1μL中のアルブミンが約50μgですね。アレェ、注入量ちょっと多かったかなぁ。ノンポーラスなんだから、すぐ結果がでますよね。もう少し希釈してやってみます。 |
| Shino | 塩濃度グラジエントなんでしょ?! もうカラムは平衡化してあるの? |
| 後輩 | これからでーす。さてと、平衡化スタート。サンプルも希釈して、注入しておこうっと。 |
| Shino | あら、平衡化の前に注入しちゃうの? |
| 後輩 | カラムにはまだ入れません。インジェクターのサンプルループに入れておくだけです。時間の節約ですってば。 |
| Shino | 今、5μL注入したけど、サンプルループの大きさは? |
| 後輩 | いくつだったかしら。(のぞき込んで)あ、20μLですね。 |
| Shino | なーんだ、これが原因よ。 |
| 後輩 | え?? どれですか? |
| Shino | サンプル注入のタイミングのこと。インジェクターの位置が“INJECT”になっている時は、サンプルループの中にその時の溶離液が満たされているの。ほら、今そうだったよねぇ。だから、サンプルループの中に追い出しバッファーが入ってたってわけ。 |
| 後輩 | それが、影響するんですか? |
| Shino | するわよ。追い出しバッファーと混ざったら、サンプルの塩濃度が高くなっちゃうじゃない。 |
| 後輩 | そうか、わかったわ。追い出しバッファーで満たされたサンプルループの中に、サンプルを少しだけ注入しても、全体としては塩濃度が高すぎて、カラムのイオン交換基がサンプルを捕まえられないんですね。 |
| Shino | そうよ。それで、まとまってVoの位置に出てきちゃうのよ。そもそもサンプル自体の塩濃度が高い時も注意しなくちゃね。ほら、イオン交換モードで分取したサンプルを、再分析する時なんかが要注意よね。 |
| 後輩 | じゃあ、もしかしてpHも影響しますか? |
| Shino | もちろん!! 解離状態が変わるでしょ?! イオン交換モードの時は塩濃度だけしゃなくて、サンプルのpHにも注意が必要よ。グラジエント出発の溶媒でサンプルを少なくとも2倍以上には希釈した方がいいわ。 |
| 後輩 | フーン。でもこんなの気がつきませんよね。だいたい私、あんまりマニュアルで注入したことないんだもの、やっぱり、オートサンプラーですね、これからのHPLCは。 |
| Shino | あら、ひどい。私のオートサンプラー返してね。持っていったきりなんだから… |
| 先輩 | イオン交換カラムが終わったら、今度はオートサンプラーが、どうしたって? |
| 後輩 | センパイ。マニュアルで注入するより、オートサンプラーの方がいいですよね。 |
| 先輩 | ケースバイケースだよね。もちろんオートサンプラーはルーチンワークや粘度の高いサンプルの場合には便利だけど、データを見ながら注入量を変えていく時だってあるからね。オートサンプラーよりも上流側に、マニュアル用のインジェクタをつけておくといいね。できればマニュアルの方は、少し大きめのループでね。 さっきの塩濃度グラジエントのことだけど、イオン交換カラムだと塩の濃度を上げて追い出しているよね。でも逆の場合もあるんだよ。 |
| 後輩 | エー?! まだ変則があるんですかあ? |
| 先輩 | HIC PH-814のような疎水クロマト用カラムを使う場合がそうだね。塩濃度の高い状態でサンプルを塩析効果で充てん剤に吸着させておいて、次にだんだん塩濃度を下げていくと、サンプルは溶解度が高まって溶出されてくるというのが、疎水クロマトなんだよ。だから、疎水クロマトの場合は、サンプルの塩濃度を濃くしないとVoの位置に出てしまうんだよ。 |
| Shino | グラジエントって、難しいんですね。いろいろ勉強になりました。 |
| Shino、後輩 | センパイ、ありがとうございました。 |