たかがODS、されどODS ニュースレターNo.14

後輩 Shinoセンパーイ、標準サンプルをひとつしか入れないのに、ピークがふたつ出るんですよ。ODSでキラル分割ができるのかしら。もしかしたら、世紀の大発見かもしれませんね。
Shino どれどれ。う〜ん、確かにピークはふたつだけれど、どんな条件で測定したの?
後輩 溶離液は、水とメタノールの比が1対1で、検出はUV吸収です。依頼測定のサンプルなんですが、芳香族化合物としか聞いていません。
Shino そのサンプルに不純物が入っているんじゃないの?
後輩

コンタミしているのかなぁ。やっぱり、旋光度検出器のShodex OR-2(販売停止)を使ってみたほうがいいんじゃないですか?(キラル分割しているに違いないわ)

Shino そのサンプルを見せてくれる?(匂いを嗅いでみて)サンプルは何に溶かしたの?
後輩 お客さまからヘキサンに溶かすようにと指示があったんです。それがいけなかったですか?
Shino いけないわ。ヘキサンには溶けても水/メタノールで析出するサンプルかもしれないじゃない? 溶解度は低くても、サンプルは原則として溶離液に溶かしてね。析出してカラムの入口に詰まってしまう場合もあるのよ。
後輩 は〜い。やってみます。
(しばらくして)
後輩 Shinoセンパイ、ピークがひとつになりました。
Shino よかったわね。
後輩 でも、せっかく世紀の大発見かと思ったのに…。
先輩 おやおや、何の発見をしたのかな?
後輩 ODSでのキラル分割法を発見したのかと思ったんです。考えが甘いですよね。
先輩 甘くはないさ。ODSで可能だという報告もあるんだよ。ただし、工夫は必要だけどね。
Shino、後輩 センパ〜イ、教えてください!
先輩 溶離液に疎水基を持ったキラルな分子を加えておくと、疎水基がオクタデシル基に吸着して、しかもキラルな構造部分が、例えばサンプルのD体を捕まえるとするね。このD体は溶出が遅れるけれど、サンプルのL体の方は素通りするから、DL分割ができるという寸法なんだ。溶離液に加える分子としてはd-カンファースルホン酸がよく知られているね。もっとも、どんなサンプルを分離するかにもよるけどね。
後輩 フーン、賢くなっちゃった。
Shino おもしろそうですね。今度試してみようっと。
先輩 さてさて、ふたりとも仕事の方はいいのかな。
Shino、後輩 ハ〜イ
(そして、夕方)
後輩 Shinoセンパ〜イ、今度はピークが出てこないんです。どうしちゃったのかなぁ。
Shino ラセミ体だと、旋光度検出器 OR-2では、検出できないよね?
後輩 からかわないでくださいよ。UVで測定してますってば。
Shino さっきの条件のままなの?
後輩 ええ。サンプルは3-フェニルプロピオン酸を、溶離液に溶かしたんですよ。
Shino 有機酸かぁ。溶離液にリン酸を0.1%くらい加えたらどうかしら。
後輩 どうしてですか。
Shino まぁ、やってみてよ。
(そして、1時間後)
後輩 Shinoセンパイ、ピークが出てきたわ。不思議ですね。吸着していたのかしら。
Shino リン酸を加える前のデータは、フロッピーディスクに保存してあるんでしょ? 感度を上げて描いてみましょう。
後輩 あら〜。これが、そうかな? リン酸を入れた時よりも早い時間にダラダラしたピークで溶出されてるんですね。ということは、吸着ではなくて、排除だったのかしら……。
Shino 残存シラノール基の影響らしいの。シリカシリーズのC18-5A(現:C18M 4D)は、残存シラノール基が少ないそうだから、リン酸をいれなくてもうまくいくかもしれないわ。比べてみましょう。
後輩 わぁ、おもしろい。探偵ごっこみたいですね。
(さて、翌日)
後輩 Shinoセンパ〜イ、C18-5A(現:C18M 4D)の方は、リン酸なしでもうまくいきましたよ〜。勘が当たりましたね。
Shino 勘じゃないわ。論理的と言ってよ。
後輩 C18-5A(現:C18M 4D)はシラノール基が、全然残っていないんですね。
Shino そうかもね。
先輩 おふたりさん。さっきから聞いていたんだけど、今度こそ考えが甘いよ。「全然」とか「絶対」なんて、科学者が口にしてはいけない言葉だよ。C18-5A(現:C18M 4D)に残存シラノール基が少ないのは確かだけれど、サンプルによっては、リン酸を加えた方がいい場合もあるだろうね。
Shino、後輩 (小さくなって)ハーイ
後輩 さてShinoちゃん、サンプルが塩基性物質だったら、どうすればいいのかな。
Shino エート、エート……。
後輩 ヤーイ、Shinoセンパイは、塩基性物質で失敗するヨ〜。論理的なんていばるからですヨ〜。
(後輩が笑いながら逃げてゆきます。きょうも、研究所は平和なのです。)

Shino 先輩が残存シラノール基やODSの上手な使い方について、説明を書いてくれたので、「ODSとシラノール」のページも読んでね。

【参考文献】
●P.J.V.D.DRIEST and H.J.RITCHIE et al, LC-GC Vol.6, No.2, 124(1998)
●J.W.DOLAN, LC-GC, Vol. 4, No.3, 222(1986)
●H.ENGELHARDT and M.JUNGHEIM, Chromatographia, Vol.29,No.1/2(1990)

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