Shinoセンパ~イ!
多機能カートリッジを使ったカビ毒のクリーンアップ方法について教えてください。
測定を妨害する成分は多機能カートリッジに残るんだけど目的物質はカートリッジを通過するように最適化設計されたクリ-ンアップ方法なの。アフラトキシン(カビ毒)の分析例で具体的に考えてみましょう。
抽出液を多機能カートリッジに通すだけなんですね。
アフラトキシンの抽出溶媒である「90%アセトニトリル」を使った時に、脂質や色素のような測定妨害成分が強く保持されるように、充填材が配合されていて...
しかも「90%アセトニトリル」中のアフラトキシンは充填材に保持されることなく、カートリッジを通過するように設計されているんですね。
ただし、アフラトキシンに物性の似た物質も一緒にカ-トリッジを通過してしまいますけどね。
イムノアフィニティカラム(IAC)を使っているわけじゃないんですもの、アフラトキシンに極性の似た物質が一緒に出て来るのは仕方ないですよ。
IACほどの精製効果はないけれど、操作が簡単で短時間にクリーンアップできる点が、この方法の良いところなのよね。
多機能カートリッジに通液する時に吸引したり、加圧して早く流せば、もっと時間短縮できませんか?
分離にはクロマトの原理が働いているのだから、1mL/min程度の自然流下で流す方がクリーンアップ効果が大きいわ。
自然流下がポイントなんですね。それにしても、多機能カートリッジはコンディショニングしないで使うんですね。カートリッジから何か出てくる心配はないんですか?
「90%アセトニトリル」溶液で使用する限り、少なくとも測定対象物質であるアフラトキシンに溶出位置が重なる成分は出てこないことが確認されているそうよ。
コンディショニングすれば、こんな心配しなくて済むのに。
コンディショニングしないとカートリッジは乾いたままよね。だから、カートリッジからの溶出液は希釈されないわ。つまり、クリーンアップ前後のアフラトキシン濃度が同じなので、溶出液を定容しなくても濃度がわかるってわけなの。
希釈されてしまったら、全量を溶出させて定容しなければなりませんものね。そういうメリットがあったんですね。
クリーンアップ前後で目的成分の濃度が変わらないから、この方法は「測定直前の試験溶液のクリーンアップ」にも応用できるんですよ。
測定直前のサンプルに応用ですって? それなら、環境基準項目のチウラム測定にも使えますか?
困ってますよね、ODSカラムの最初の方に出てくる大きなピーク。チウラム用にAutoprep MF-1という多機能カートリッジを開発しましたから、試してみますか?
いつも通りにHPLC測定用サンプルを調製して、これを多機能カートリッジに通すだけでいいの?
そうです。
チウラムの場合、HPLC測定用サンプルは1mLのアセトニトリル溶液になりますから、これを多機能カートリッジに通すと、液量は少し減りますよね。
0.8mLくらいになりますが、普通のHPLC装置なら、この液量で問題ないはずです。
測定済みのサンプルで試してみましょうか?
測定済みのHPLC用サンプルにチウラムを添加して、多機能カートリッジに通液してみるんですね。クリーンアップ効果を確認するだけなら、これで充分だわ。やってみます。
さて、翌週
Shinoセンパイ。測定済みの土壌のHPLC用サンプルを10種類選んで、環境基準の3/10になるようにチウラムを添加してから、MF-1カートリッジに通液してみました。通液しただけで、ホントにクロマトがきれいになりました。
クリーンアップ後のクロマトパターンは様々だけど、どのクロマトもチウラムがベースラインに戻って測定できてるわね。
サンプルI の場合は、チウラムにリーディングパターンで重なっていたピークが消えて、妥当な回収率になりました。
妨害ピークが重なっていたのは、サンプルI だけ?
回収率に影響する程ではありませんが、サンプルAとFにも妨害ピークが重なっていました。
サンプルAの妨害ピークはチウラムと少し離れているけど、サンプルFの場合はテーリングの形で重なっているのね。
妨害ピークのパターンも色々だけど、どれもMF-1を通せば、きれいに消えました。
今回試した10種類の土壌では、クリーンアップ効果が確認できたってことね。
私は、添加してから24時間後にチウラムのピークが減少しているのが気になります。
10検体のうち7検体でチウラムが減少したのだから、土壌にチウラムを分解する成分が含まれているようですね。
クリーンアップした後では、多くのサンプルでこの減少が解消されていますから、土壌由来のチウラムを分解させる成分は、MF-1で除去できるようですね。でも私が気にしているのは、サンプルBのケースなんです。
サンプルBは、よくわからないわね。クリーンアップしない方は回収率が安定しているのに、MF-1を通して24時間経ったらチウラムのピークが小さくなるんですもの。
この時だけ、MF-1カートリッジからチウラム分解成分が出て来たみたい。
サンプルBの土壌が残っていますか?
いいえ、全部使ってしまいました。
検証できなくて残念です。同じ現象を見つけたら、知らせてくださいね。
サンプルBの件は別途考えるとして(原因究明は難しいだろうなぁ)、今はアセトニトリルに添加したチウラムをMF-1に通液して、24時間後まで回収率を追ってみましょう。
土壌サンプルで性能評価したのに、どうして、アセトニトリルでのチェックをするんですか?
PS系カートリッジから溶出させるときに水も混入しない?
え?チウラムが加水分解されるってことですか?
分解の件は今は考えない。それよりも、水が混在したらチウラムがMF-1を通過しないかもしれないでしょ?PS系カートリッジでの脱水が不充分だというケースも想定して、水/アセトニトリル=50/50までチェックしましょう。
はーい、わかりました。
数日後
Shinoセンパイ。50%水があってもチウラムはMF-1を100%通過しましたし、24時間後も減少しませんでした。PS系カートリッジの脱水が不充分でも大丈夫そうです。
皆さまも、多機能カートリッジMF-1をお試しくださいね。