Shinoセンパイ、中性と塩基性のサンプルが混在している時、どうやって分析したら一番いいのかしら？

単純に考えれば、イオン交換カラムが一番ね。

陽イオン交換カラムを使うわけですね。例えば、SP-825カラムの場合、中性のサンプルはカラムに保持されないけど、塩基性のサンプルはカラムのスルホプロピル基 (マイナスの電荷を持つ)に保持されるという分離の違いを利用するわけですね。

塩基性のサンプルが複数存在する場合は、どうすればいいと思う？

塩基性サンプル同士の解離状態が変わるように、溶離液のpHを調整します。

もし、中性のサンプルも複数存在したら？

構造式や物性が大きく異なっていれば分離できるかもしれないけど、ちょっとの違いじゃダメですね。

つまり、イオン交換カラムには逆相モードでの分離は期待できない、ってことよね。

だってイオン交換樹脂には解離している基がたくさん付いているんですもの、充てん剤のベース骨格に依存する分配吸着は期待できません。

そんな時こそ、マルチモードのカラムをご使用ください。

あ！わかった。マルチモードのカラムには少量の陽イオン交換基しか付いていないから、分配吸着モードも利用できるんですね。

そうで～す。例えばShodex Asahipak GS-HQシリーズは、ポリビニルアルコールに少量のカルボキシル基を導入した充てん剤を採用してますし、Shodex RSpak NN-804は、ポリヒドロキシメタクリレートに少量のスルホ基を導入した充てん剤を採用してます。

どっちもマルチモード？　どう、使い分ければいいんですか？

分析対象が、中性と塩基性の混合サンプルで、しかも分析条件下で強く解離している塩基性サンプルが存在する場合は、イオン交換能が弱いGS-HQの方がいいわね。

でも、グラジエント溶出を利用するなら、どっちのカラムでも大差ないってことですね。

その通り。ただし、分析対象が、中性、塩基性、酸性の混合サンプルだったら．．．．．

酸性サンプルが加わるってことは、ん～、今度はイオン排除も働かせるっわけですね。まとめてみると

有機酸のようにカルボキシル基を持っているサンプルの場合は、GS-HQカラムよりもNN-814の方がシャープなピークになるわ。NN-814は、強く解離するスルホ基を持ってますからね。 それから、GS-HQカラムの基本はサイズ分離モードですし、どちらのカラムを使用した場合でも、分配吸着モードは働いていることもお忘れなく、ね。

NN-814の分離モードをまとめ直すと

GS-HQカラムの場合は、これにサイズ排除も加わっているんですね。うーん、まさしくマルチモードですね。

イオン排除やイオン交換モードを利用しているんだから、イオン交換基の解離状態を一定に保つためにも、カラムは恒温槽に入れて、一定の温度で測定してくださいね。

分配吸着にだって、カラム温度の変化は影響しますよね。

まぁ、良いところに気がついたわね。それはODSにイオンペア試薬を加えた場合に、特に注意する必要があるのよ。

ODSにイオンペア剤を加えるって、人為的にマルチモードカラムを作るってことですよね。

例えば、ODSに1-ペンタンスルホン酸ナトリウムを加えるっていうのは、NN-814を自分で作っているのと同じよね。イオンペア試薬のアルキル鎖が分配吸着モードによってODSにくっつくとスルホ基が露出するから、あたかもイオン交換カラムが出来たようになるの。(図1)

このイオン交換基に塩基性サンプルがくっついて、カラムに保持されたことになる。

ところが、このイオン交換基の量は、溶離液の中に存在するイオンペアの量との平衡状態にあるってわけ。

溶離液の中のイオンペア試薬にも塩基性サンプルが付いたり離れたりしてるわけだし、なかなか複雑な平衡状態があちこちに成立してるってことなんですね。この複雑な平衡状態を一定に保つためには、溶離液のpH、濃度、温度の管理が、とっても重要ですね。

溶離液のバッファー能も充分高くないとね。だって、サンプルを注入する度に、溶離液のpHがずれていたら、どうなると思う？

ODSにくっつくイオン交換基の量が変化しますね。ややこしい。 わたしは、イオンペア試薬よりもNN-814の方がいいわ。

では、もうひとつお勉強。イオン交換カラムを使わずに塩基性サンプルを分離するには？

当然、イオンペア試薬も使用しないんですよね。

もちろん。

そうだ！　アルカリ性溶離液の中で、塩基性サンプルの解離を抑えれば、相対的にサンプルの極性が下がるって方法でした。

そうよ、この方法なら塩基性サンプルが分配吸着モードで分離できるのよ(図2)。

なんだか、やる気出てきました。選択肢が多いって心強いですね。