カラムの耐圧って何?

後輩

Shinoセンパイ、圧力の表示っていろいろあるんですね。外国から来た手紙には、barで表示されてました。

Shino

HPLCの世界で圧力に使用されている単位は、kgf/cm2、bar、psiと様々だけど、国際単位系に統一されるので、これからはパスカルで表示されることになるのよ。一覧表を作って見ましょう。

スクロールできます
MPa bar kgf/cm2 psi atm
0.098 0.98 1 14.3 0.97
後輩

フムフム、なるほど。平成11年の9月30日以降は、パスカル表示になるんですね。ってことは、カラム耐圧が200 kgf/cm2のODSカラムの場合は、カラム耐圧は約20,000 kPa、つまり約20 MPaになるんですね。うーん、難しい。
例えば、1本あたりのカラム耐圧が60 kgf/cm2の、おっと約6,000 kPaのカラムを2本繋いだ場合は、カラム耐圧は約6,000x2=約12,000 kPa=約12 MPaになる、でいいんですよね。

Shino

そうよ。そして、メーカーが提示する『カラム耐圧』は『カラムにかかる圧力を指しているのであり、装置にかかる圧力は含んでいない』ってことも忘れないでね。

後輩

だって、装置にかかる圧力は無視できるんじゃないですか?

Shino

そうでもないんだなぁ、これが。内径0.1 mmの配管を使用した場合はどうかしら?

後輩

そういえば、0.1 mm内径の配管を数mコイルにして、インジェクターの上流に入れて、ダンパー代わりにしますよね。コイルを入れると圧力が増えますものね。やっぱり、装置にかかる圧力は無視できないってことなんですね。

Shino

セミミクロカラムを使用している場合は、どうかしら? 当然、配管の内径は0.1 mmだし、検出器もデッドボリュームを少なくするために、内部の配管を細くしているのよ。

後輩

それに、セミミクロカラム用のインジェクターも圧力がかかりますものね。わかりました。装置にかかる圧力を差し引いて、カラムの耐圧を考えることにします。でも、いちいち、装置の圧力を測定するのは、面倒だなぁ。だって、カラムを外して、インジェクターと検出器をユニオンで繋がないと、装置の圧力は出ないんだもの...。

Shino

いい手があるんだ。まず、カラムの出口側の押しネジを緩めるの。これで、カラムより下流の装置での圧力の関与が無くなるわよね。 次に、カラムの入り口側の押しネジを緩めると...

後輩

ポンプ、ダンパー、インジェクタにかかる圧力が分かりますね。

Shino

そうやって、カラムにかかる圧力を求めるのよ。セミミクロカラム用のインジェクタを使用していなければ、カラムより上流側の圧力は無視してもいいかもね。さて、カラムの耐圧ってどういうことでしたっけ?

後輩

その圧力を越えて使用すると、カラムが壊れる恐れがあるという意味ですよね。でもねShinoセンパイ、使用最高流速が取扱説明書に書いてあるんだから、流速で制御すればいいんじゃないですか?

Shino

そんな素人みたいなこと言わないで!! 最高使用流量よりも、カラム耐圧の方が優先します!!だって、粘度の高い溶離液の場合は、流速はOKなのに、カラム耐圧を越える、っていうケースもあるじゃない?

後輩

そうでした。すっかり忘れてました。溶離液が水/メタノール=50/50の時って、かなり粘度が高いですものね。カラム耐圧の80%くらいにポンプのアッパーリミッターを設定しておくのが無難だって、先輩に教わったんでした。

Shino

ええ、そうよ。それから、ポンプのロウアーリミットもちゃんと設定してくださいね。

後輩

はい、カラムの種類によって異なりますが、大抵は10から20 kgf/cm2じゃない、約1から2MPaくらいに設定してます。溶離液がなくなった時には、圧力が急激に下がるから、そんな時にポンプを止めるために、ロウアーリミットを設定するんですよね。

Shino

ロウアーリミットを設定していなかったばっかりに、ポンプが空気をカラムに送ってしまう。そして、カラムは一環の終わり、ですものね。

後輩

分かってます。空気入りのカラムで泣いたのは、一度や二度じゃありませんからね。

Shino

そんなこと自慢しないでよね。それより、皆様のために、なぜ空気入りのカラムが使用出来ないのか、説明してください。

後輩

少量の空気がカラム内に入った場合、空気は充てん剤の間やポアの中に詰まっている状態になります。この空気は、カラム内を移動するにしたがって、小さな空気の粒になりカラム内に分散してゆきます。空気の粒は、新しい溶離液が流れてくる度に、少しずつ吸収されて小さくなってゆきますが、空気の粒のままカラムから出てくる分もあります。予期せぬ時に出てきた空気の粒がピークとなって検出されるわけですから、大切なクロマトがおシャカになる危険性があります。

Shino

空気の粒がある場所と無い場所では、溶離液の流れが均一にならないため、カラム内にバイパスが出来たと同じ効果が生まれて、ピークがブロードになったりもしますよ。

後輩

はい。これだけ分かっていれば、もう怖いものはありません。kgf/cm2とパスカルの換算表を液クロ装置に貼っておこうっと。