Shinoセンパイ、どうしたらゴーストピークを除けるのかしら。
まず、何が原因なのかつきとめなくっちゃ。クロマトは?
いえ、今困っているわけじゃないんです。ほら、あせっている時にかぎって、変なピークが測定のじゃまになったりするんですもの。時間がある時に対策を考えておこうと思ったんです。
まぁ、それはいい考えね。あなたなら、どうする?
ゴーストピークの溶出時間やピークの形に再現性があるかどうか、繰り返しサンプルを注入してみます。
再現性がある場合は?
サンプルを溶解している溶媒だけを注入してみます。これでゴーストピークが消えれば、ゴーストピークはサンプルに由来する成分だということになりますね。
そうよ。ゴーストピークもサンプル中の一成分として同定する必要がある時は、可能性のありそうな分解物、副生成物や不純物を注入してみて、溶出位置が重なるかどうかチェックするといいわ。でも、最終的には分取して構造解析するしかないけど・・・
測定のじゃまをしているゴーストピークを除くのにはサンプルの前処理しかないのかしら?
検出方法を変更するのもひとつの手なのよ。UV検出なら波長を変えてみるのもいいし、たいてい不純物は極く微量しか含まれていないのだからUVからRI検出に変えれば検出されなくなるわ。いいかえれば、不純物検査のためにはいろいろな検出方法を試す必要があるっていうことでもあるのよ。
そうですね。210 nmで試薬グレードのリンゴ酸の測定をした時に不純物の方が大きなピークになって大騒ぎしましたよねぇ。検出方法でもだめなら分離モードを変更するしかありませんか? 逆相からイオン交換に変更するとか・・・・
それでは大変ねぇ。その前に、もし逆相モードで分析しているのなら溶離液の有機溶媒の種類を変えてみるのもいいかもしれないわ。例えば水/アセトニトリルの溶離液では分離しなかったピークが、水/THF溶離液では分離することもあるというわけ。
それなら簡単!! それに同じ逆相モードでも、充てん剤をシリカ系のODSカラムからポリマー系の逆相カラムに変えるっていうのも効果がありそうですね。
その通りよ。試してみる価値はあるわね。さて次に、サンプルを溶解している溶媒だけを注入した時もゴーストピークが出てくる時には、何を考えたらいいと思う?
これはもう、インジェクターの汚れですよね。インジェクターの分解掃除をすれば完璧だわ。
そうね、サンプル注入用のシリンジも洗浄した方がいいわね。
それで充分かな? それでもゴーストピークが出たらどうする?
あ! 先輩。忘れてました。サンプル調製に使用する器具も重要でした。試験管やサンプルろ過用のフィルターからの溶出物。サンプルを溶かすのに有機溶媒を使用しているのなら、プラスチックやゴムの付いたサンプル瓶からの溶出物に注意した方がいいわ。
そういえば蛍光検出していた時に、台所用洗剤で試験管を洗って失敗しましたものね。
ふむふむ。それでもまだゴーストピークが出たら?
まぁ、センパイ! そんなことってあるかしら。
う~ん、何かなぁ。それでも出るゴーストピークって。
これはゴーストピークというより、どちらかといえばシステムピークに近いものなんだけどね。GPCカラムで一番最後にいくつかピークが出てくるだろう? あれは何だと思う?
確かにRI検出している時は、3 ~ 4つピークがでますね。
溶離液がTHFならTHFと添加剤のBHTのピークは出るはずですけど、その他は何かしら。
溶離液が純水の時でも出ますよね。
サンプル液の中に溶けている空気や水蒸気のピークなんだよ。
え~!! 信じられな~い。
サンプル液にとけ込んでいる酸素や窒素、炭酸ガスも極く極く微量とは云え、成分のひとつだからね。カラムの中でこれが分離されるわけだ。GPCカラムの場合だと、溶媒ピークの後ろにカラムで分離された空気や水のピークが出てくるんだよ。極く微量ではあっても、溶存ガスの濃度や水分量が違うと屈折率が微妙に変化するからね。RI検出器は、この微妙な濃度差を検出してくれるというわけだ。溶離液に窒素や、酸素をバブリングしてから注入してごらん。
ストローで息を吹き込めば、炭酸ガスの位置も確認できますね。
どんなサンプルを注入した時にも空気のピークは必ず出てくるんだから内標としても使えるんだよ。特にGPCの場合は溶出時間の僅かなずれが重大な問題になるのだから、この空気ピークの溶出時が一定かどうかをきちんとモニターすれば、流速が一定かどうかのチェックにもなるね。
すばらしい!! すぐに確かめてみます。