Shinoセンパーイ。ピーク高さの再現性がないんです。
(図1を見て)あら、1回目に比べて2回目は全体にピークが小さくなっているわね。4回目には少しピークが出てきているけど、3回目には全くピークが出ていないわ。これはひどいわね。
標準サンプルなのに、注入する度に全然ピークの大きさが違うんですよ。RI検出器が壊れたのかしら。
検出器じゃないと思うわ。だって、アラームランプが灯いていないでしょ。あなたのことだから、注入量を間違えたんじゃない?
そんな筈はないわ。インジェクターの20 μLループ分だけ注入しているんですもの。
おかしいわねぇ。サンプルが変性しちゃったのかしら。何を測定しているの?
どれどれ、見せてごらん。
あ!! センパイ、見てください。
ウーン、これは検出器じゃないね。もし検出器が壊れたのなら、3回目でピークが出なくなった後に、4回目で回復したりはしないからね。第一、ベースラインはきれいに描けているしね。たぶん、原因はインジェクターだな。
インジェクターですかぁ??
インジェクターが壊れていて、注入量が毎回違うのだとしたら?
それなら納得できるわ。
わたしは納得できません。注入量が違うだけならクロマトグラムは相似形になるだけでしょ。3回と4回目に出ているマイナスピークの説明がつかないわ。
このマイナスピークは、空気だと思うわ。
多分そうだろうね。まず、インジェクターをチェックしてみよう。(インジェクターを分解しながら)これがローターシールだよ。やっぱり思った通りだ。
えぇ?! どこが悪いんですかぁ?
新しいローターシールを持ってきてごらん。比べてみよう。(図2参照)
あら、古い方はここに線が付いているわ。この線が原因ですか?
そうだよ。結晶化したサンプルがローターシールを傷つけて、出来た溝なんだ。本来ならサンプルはループの中に入る筈なのに、この溝を通って廃液側に漏れてしまったんだね。
溝が深くなったから、全部廃液側に流れてしまったというわけですね。それにしても急に溝が出来るわけじゃないですよね。今まではどうだったの? ピークの再現性はちゃんとあったの?
少々のばらつきはありましたけど・・・・あんまり気にしても仕方ないでしょ。
困った人ねぇ。
さて、いい機会だからサンプル注入の方法を復習しておこうね。基本は?
注入したいサンプル量のループを取り付けます。20 μLのループの場合なら注射筒には100 μL用を選んで、サンプルを少なくとも60 μLは吸引します。そしてゆっくり注入します。
注射針はインジェクター専用の規格のものを使用します。先が平らなのや尖ったのがありますものね。
OK。それでは、注入するときの動作は?
まず、INJECTからLOADに切り替えてから注射筒を刺し込みます。
あら、それは間違いよ。INJECTの状態で注射筒を刺し込んで、すぐにLAODに切り替えます。サンプル液をループに注入した後も注射筒は抜かずに、ここがポイントよ。カチンとINJECTに切り替えて注入完了です。
え~、本当にその順番じゃないとダメなんですか?
LOADしてから注射筒を差し込んでも大丈夫なケースもあるけれど、いちいち区別して憶えるのは大変だろう?原則はShinoチャンのやり方だよ。
でも、注射筒を刺し込んだままで切り替えると、針先でローターシールを傷つけるような気がしますけど。
針先は直接、ローターシールには触れていないんから、大丈夫。それよりも、少なくともILOADからINJECTに戻すときはサンプルループに空気が入らないように、注射筒をインジェクターに差し込んだままの方がいいだろうね。それに、始めにINJECTの状態で注射筒を差し込む時も空気が入る可能性があるから、少しだけサンプルを押しだした後でLOADに切り替える方がいいね。
でもどうすればローターシールに傷を付けるのを防げるのかしら。
サンプルを注入した後、注射筒を抜くと空気に触れるだろう!?Needle Portに残っていたサンプルが、空気に触れて結晶化するとこれがローターシールを傷つけることになるんだよね。結晶化しやすいサンプルの場合は、注入毎に、インジェクターを洗浄した方がいいね。
注入毎にインジェクターを洗浄するのは大変ですね。私は定期的にローターシールを交換する方がいいわ。
ゴーストピークの原因にもなるから、注入毎にインジェクターを洗浄するほうがいいんだけどなぁ。
まぁ、いずれにせよ、ローターシールを交換するときには、ローターシールの種類にも気をつけるんだよ。使用する溶離液によって、耐溶媒性や、耐アルカリ性のあるローターシールを使い分けてくれよ。
はーい、ありがとうございました。