Shinoセンパ~イ、「ベースラインの変動」ってどんなトラブルですか?
たとえばドリフトしたり、大きくベースラインがうねることがあるわね。経験したことないの? それって問題よ!
安定して使えるのは、腕がいい証拠じゃありませんか。
そういう考え方もあるけれどねぇ。気がつかないだけじゃないの?
ベースラインのドリフトが気にならない程度まで感度を下げて測定すればいいんだから、サンプルを大量注入するのが一番良い方法だと思うわ。
本当にそれができれば苦労はないんだけどねぇ。微量分析の時はどうするの? 第一、カラムの分離機構によって適切なサンプルの注入方法が違うのよ。たくさんあるんだもの、次のシリーズにしようかしら・・・
シリーズにするほどあるんですかぁ? わぁ大変! それじゃあ、とにかくベースラインの変動ですね。ノイズのチェックのときと同じように、まず、ポンプを止めてみます。
その前にポンプに表示されているカラム圧をチェックしてね。ベースラインの変動に連動してカラム圧が変化している場合はポンプの不良だと考えられるわね。
ポンプのチェック弁に不良があるわけですね。
さて、ポンプを止めてもベースラインが変動しているなら?
原因は電気系ですよね。アースが完全かどうか、検出器の光源ランプが劣化していないかなどのチェックをします。反対に,ポンプを止めてベースラインが安定するなら、原因は流路系ですね。カラムの汚れとか溶離液の変質とか溶存ガス量の変化とかいろいろありますね。
もちろんそれも考えられるけれど、溶離液の種類を変えた時が盲点なのよ。例えば緩衝液を溶離液に使用していた装置を、今度は80%メタノール溶離液で使い始めたなんていう場合ね。
緩衝液が残らないように水で充分洗えば問題ないと思いますけど。
どうやって洗っている?
えーと、緩衝液で使っていたカラムを外しますよね。
ちょっと待って。カラムを保存する時には、元の溶媒に戻してくださいね。何の溶媒に戻したらよいかわからなくなった時はカラムの取り扱い説明書を読んでね。
はーい。それでカラムを外した後、インジェクタの出口と検出器をつなぎます。それから装置に残っている塩を除くために純水を流します。緩衝液のpHがわかっていますから、装置から出てくる廃液のpHが中性になるまで洗浄すれば完璧ですよね。
RI検出器の場合はパージをONにしてリファレンスセルも洗ってくださいね。でもね、それだけじゃ不充分なの。カラムを付けて緩衝液を溶離液に流していたときのカラム圧が 50 kg/cm2だったとするでしょ?! 装置を純水洗浄している時の圧力はどうかしら。
1~2 kg/cm2でしょうね。そうかぁ、もしダンパーがついていたら中まで洗えないですね、少なくとも 50 kg/cm2以上で洗わなくちゃ。
ダンパーを内蔵しているポンプもあるから、注意してね。それにポンプヘッドや配管の接続部にネジを使っているでしょう。このネジのミゾに沿って溶離液が染み込んでいる場合もあるから、装置の洗浄って、とっても注意が必要なのよ。
ふーん、ネジのミゾの中まで洗うんですね。
考えてもみてよ。次に予定している実験で使うカラムがODSなんかで、80 % メタノールを 150 kg/cm2で流すんだと仮定してみたら?
ネジのミゾから塩がでてきて、析出しちゃうでしょうね。わぁ、これじゃいっぺんでカラムが駄目になっちゃうわ。どうやって洗えばいいんですか?
低圧状態での純水洗浄が終わったら、ポンプの出口に密封栓をします。ポンプのリミッターを 300 kg/cm2に設定して、流速を上げて純水を流すと・・・
あっと言う間に 300 kg/cm2になって、ポンプはすぐ止まります。
では、ポンプのブローバルブを開いて液を捨ててください。
あ!! こうやってネジのミゾやダンパーの中まで洗うんですね。
その通り。10回ぐらい繰り返したらOKよ。ポンプの下流にダンパーが付いている時は、ダンパーの出口に密封栓をして同じことをすればいいわ。
そんなこと誰も教えてくれなかったわぁ。
洗浄の時に検出器に背圧をかけないこと。それから、いざ実験を始める前には必ず、ポンプのリミッターを使用するカラムの耐圧以下に戻して、流速を下げるのを忘れないでね。
洗浄終了、カラムつないでポンプON。あっと言う間に圧が上がってカラムが壊れる・・・えへへ、やりそうですね。注意しま~す。
ついでに1つだけ。装置に風が当たって微妙な温度変化がある場合は一定方向にドリフトするし、ランプを使用する検出器の場合は、検出器全体が一定温度に温まるまで時間が必要なことを忘れないでね。
ウォーミングアップの時間ってどのくらい必要ですか。
30分から1時間だけど検出器の種類によっても違うから取り扱い説明書を読む習慣をつけた方がいいわね。
という訳で、Shinoチャンと後輩合作の「ベースラインの変動チェックリスト」お役に立てば幸いです