昨日はうまくいったのに。おかしいわ、RI検出器が安定しない……。
カラムから何か溶け出しているんじゃないですか?
カラムは外してみたの。それでも変わらないのよね。
RI検出器のセルが汚れているか、もしかして、液漏れしてるんじゃないですか?
液漏れ? (調べてみて)大丈夫みたいよ。
Shinoセンパイ、確かフローセルを先週洗ってましたよね。セルの汚れじゃないとすると、あ!そうだ。溶離液は入っていますか?インレットチューブは溶離液瓶の底に届いていますか?
溶離液は入っているし、ポンプも動いているわよ。どうして?
実は私、この間大失敗したんですもの。インレットチューブを溶離液瓶にぐいぐい押し込んだら、先端が折れ曲がってエアを吸っていたんです (図参照)。最近のポンプってエアも送っちゃうんだよって、先輩に教わったばかりなんですよ。
まあ、あなたとは違うわよ。溶離液だってつくり直したばかりだしインレットチューブだってちょうどよい長さに固定してあるわ。それにしてもミステリーだわ。
Shinoセンパイ!検出器から溶離液が出てきませんよ!
え~!?まあ、本当だわ。
でも、ポンプ動いていますよねぇ。
(インレットチューブを持ち上げてみて)エアを吸い込むってことは、液を送っているってことだわ。まあ大変!どこにも液は漏れていないし……。
ということは、検出器の中!!
Shinoセンパイ、あわてないで。電源を切りましょう。
お正月早々、にぎやかだねぇ。何をやらかしたのかな。
センパーイ。助けて下さい。たぶん、検出器の中に溶離液が溜まっているんです。
何が起こったの?
これこれ、しかじか
Shinoチャン、溶離液は何を使っている?
DMSOです。
きのう、流路を洗わずに帰ったね。
いいえ、ちゃんと洗いました。
洗浄時間が足りなかったんだね。検出器のフローセル部分にDMSOが残っていたんだな。なにしろDMSOの融点は18度くらいだから、夕べの寒さで凍っちゃったんだよ。そこに溶離液が流れてきたから、ひとたまりもなかったって訳だ。
センパイ、セルの耐圧ってどのくらいですか?
4~5 kgf/cm2だよ。電源コードを外して、そっと蓋をあけてみよう。(後輩の方を振り返って)おっと、安全メガネをかけてきなさい。ほーら、やっぱりお風呂になっていたね。そーっと汲み出して、あとはメーカーに修理してもらおう。
Shinoセンパイ、大失敗でしたね。
人のことは、いいの。それより安全メガネはかけなきゃだめだよ。
ハーイ。
さて、いい機会だ。安全について知っていることを言ってごらん。
(得意気に)安全メガネをかける。実験室でものを食べない。腕まくりをしない。えーと、何か手についたら、すぐに洗う。ひとりで実験をしない。
液の流れる装置は、目の高さより下に置く。特に脱気装置、ポンプ、廃液瓶は、そうですよね。液体の入った瓶は転倒防止する。それから、急に立ったり、振り向いたりしない。有機溶媒を使うときの換気。あ! 実験室でタバコを吸わない。
実験台に何かこぼしたら、すぐ拭く。溶離液瓶には、中身が何かわかるようにラベルをつける。
ラベルには、作った人の名前と、年月日を入れること。よくありますよね。何が入っているんだかわからないけど、誰のかわからなくて捨てられない瓶って。
液クロに的を絞って、考えてごらん。
DMSOや塩や酸を使った後は、流路をよく洗っておくこと。カラムをしまう時は、取扱説明書にしたがって溶媒置換するか、何の液が入っているか明記すること。そうだ、使わなくなったチューブもそうですよね。水だと思っていたら、クロロホルムが出てきてびっくりしたことがあるわ。
他に、何かありますか?
ほら、このポンプを見てごらん。不安全行為があるよ。
えー、どこですかぁ。アースはとってありますよ。私が組み立てたんだから……。(悪いところなんて、ないわ)
パージ用のブローチューブが細すぎるわ。それに、固定したほうが安全よ。
そうだね。勢いよくブローした時に、チューブが踊ったりしなかったかな?有機溶媒やアルカリ液が飛んで目に入ったら大変だよ。Shinoチャンの言うように、ブローチューブは内径2 ~ 3 mmの太いチューブをしっかり固定して使う方が安全だね。
そういえば、無意識の内にブローの度にチューブを抑えていたような気もする…。ありがとうございました。すぐに取り替えます。
Shinoチャンは、すぐにRI検出器の修理伝票をきること。
はーい。センパイ。ありがとうございました。
今年も安全第一でがんばりましょうね。読者の皆さまも!!