逆相カラムの上手な使い方

逆相モードの原理

液体クロマトグラフィにおいて、逆相モードは70 %以上の頻度で使用されていると言われています。しかも、その多くはODSによるものです。逆相モードでは、極性の小さい充てん剤と水を含む極性溶媒を溶離液に用います。その分離機構は主に疎水性相互作用によるものです (図1参照)。
試料は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基のような親水性とベンゼン環、アルキル鎖などの疎水性部に分けることができます (図2参照)。充てん剤であるシリカゲルに化学結合しているオクタデシル基は疎水性です。したがって試料の疎水性部であるベンゼン環は溶離液中の水分子からの反発を受けて、オクタデシル基と密着し、系全体の疎水性部の表面積を小さくしようとします。こうして試料が充てん剤に保持されるわけです。ここでは溶離液としてメタノールと水を用いていますが、水の割合が大きくなる程、試料の保持時間は大きくなります。
一方、同じ組成の溶離液ですと、試料の疎水性部の割合が大きくなる程、保持時間が大きくなります。つまり、ベンゼン環が多い程、アルキル鎖が長い程、また極性の官能基が少ない程、保持時間が大きくなります。

分離の調整

充てん剤への保持の大きさを表す指標として、容量比 (Capacity factor)k’があります。

k'=(tR-to)/to
 k' : 容量比(Capacity factor)
 to : 充てん剤に全く保持されない成分の溶出時間
 tR : 目的成分の保持時間

k'はカラムサイズ、流速等に無関係な値です。イソクラティック溶出で適度な分離を得ることができる範囲はk'が1から10の間にある時です。(最後に溶出する成分と最初の成分の保持時間の比が30以上になるとグラジエント溶出法を用います)k'が1から10の範囲に入らなかった場合、溶離液の組成を変更しなけれ ばなりません。つまり、k'が大き過ぎる場合、有機溶媒の割合を大きくし、小さ過ぎる場合は水の割合を大きくします。
変更の程度の目安としては、多くの場合10 %ルールが有効です。つまり、有機溶媒量を10 %少なくするとk'は2~3倍大きくなるというルールです。 逆も成り立ちます。例えば60%メタノールの溶離 液を70 %メタノールに変更するとk'=20の試料は、V=6 ~ 10になるわけです。

妨害成分への対策

k'を適度な値にしても、妨害成分により正確な分析ができないことがあります。この時は溶離液に使用している有機溶媒の種類を変えるか、 第3の成分を加えてみます。(もちろん、カラムの種類を変える方が有効な場合が多いようですが、 ここでは同じカラムを用いるという前提で進めます。) 主要な成分のk'を同じ値に保ったまま有機溶媒の種類を変えるにはどうしたらよいのでしょうか。 よく用いる溶媒であるメタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)についてk'を一定にする関係を調べた報告があります(図3)。 点線で示したようにメタノールが60 %の時アセトニトリルが50 %の時、THFが37 %の時に、それぞれ同じk'が得られるわけです。

参考文献

  • G.Horvath, W.Melandar and I.Molnar, J.Chromatogr.,No.125,129-156(1976)
  • John W.Dolan, LC-GC, No.5, 1030-32(1985)
  • P.J. Schoenmarker, H.A.H. Billiet and DeGalan, J.Chromatogr.,
    No.218,261-284(1981)